2018-01-09

手を合わす日  NO 8083

CD 慈曲20数年前、会社の事務所の2階に「隠れ家」と呼ばれる私の部屋があった。様々な音響設備がセッティングされ、ビデオ映像の収録や音楽とナレーションの吹込みも可能で、ネット社会でその存在が知られるようになり、全国各地の同業者や司会者から訪問希望があった。

そんなある日、女性スタッフから「こんなファックスが届きました」とプリントを手にやって来た。読んでみると「葬儀に音楽が重要です。私はシンセサイザーの奏者で葬儀の音楽に強い思いを抱いています」と書かれてあり、何時でもいいから来社をと返信を命じていた。

数日後、その送信者が来社。10分も経たない内に意気投合。その不思議なご仏縁に感謝することになった。

2日後にある宗派の本山で合同葬を担当しており、弔辞の奉呈が4名あったことから「BGM」をやってみるというと嬉しそうな表情で快諾。すぐに選曲について打ち合わせに進んだ。

「大阪府下の葬儀社約200社に送信しましたが、返信があったのは御社だけでした」と明かしてくれたが、弊社や私の存在を前々から聞いて知っており、ファックスを送ることも躊躇していたそうだが、送信したことから出会うことになったのだから不思議である。

当時、弊社の葬儀の会式前に「奉儀」と命名したオリジナルなひとときが行われており、それに関する音楽は任せることはなかったが、合同葬の弔辞のBGMは素晴らしい演奏で、何より驚いたのは奉呈者の弔辞の内容を耳で確認しながら、終りが近づくとアドリブ作曲の演奏で対応、それは奉呈者が着席すると同時にエンディングを迎えるという驚きのテクニックだった。

そこから彼女と一緒に仕事をする機会が増え、九州から北海道まであちこちの大規模葬でキャスティングすることになったが、昨日の成人式の悪質業者が着替えの会場として巻き込んでいた横浜の新横浜国際ホテルで行われたセミナーにも出演して貰い、リハーサルの時に体調が悪そうで確認したら風邪気味で38度の高熱なのにシンセサイザーをキャリーバッグで運んで新幹線でやって来たプロ魂にみんなで驚いたことも忘れられない。

その後、私がシナリオを描いて作曲を依頼し、出来上がったのが葬儀音楽オリジナルCD「慈曲」で、様々なテレビ番組で採り上げられ、読売テレビの「宗教の時間」で特集されて二人が出演したことは予想外の出来事だった。

彼女は絶対音感の持ち主で、どんな曲でも瞬時にレクイエムとして編曲して演奏するのだから天才的で、彼女の存在に多くの同業者達が羨望されることにもなった。

弊社のホールで何度かコンサートを行ったこともあるが、アコースティックギターで知られる二人の奏者と国連で演奏をしたという女性のベーシストと共にジャズ演奏をした彼女のアコーディオンが最高で、満員の人達から絶賛されたこともあった。

さて、民放のテレビを観ていると「CM」は仕方ないが、好感を抱くものもあれば1回観ただけで食傷気味になってしまうものもある、最近の「CM」で後者になるのは「ANA」のスターウォーズを歌うもので、流れ始めたらチャンネルを変えてしまう。

好感度を抱く「CM」は詩人「金子みすゞ」の作品を用いている「非破壊検査株式会社」で、提供しているBSのフォレスタを楽しみにしていることもあるだろう。

最近の「CM」でシナリオを発想構成した人物に「素晴らしい!」と賛辞を贈りたいのはアマゾンの「CM」で、孫がお婆ちゃんの家に立ち寄ってスマホでアマゾンに注文をして、次の日に届いたヘルメットを装着してお婆ちゃんを後席に乗せてオートバイで走るストーリーであり、何度目にしても抵抗感を抱かないのは自身が高齢なったからだけではないように思っている。

ある人物との交友がある、彼は「CM」やテレビ番組の「番宣」でも著名なクリエーターで、ユニークなテレビCMが印象に残っているが、私が作曲した曲も入っている監修した葬儀音楽「CD」を「慈曲」と命名してくれた人物でもある。

その彼から今日電話があり、上述の彼女が昨年の7月に亡くなっていたと知らせてくれた。彼女と年賀状の交流のあった北海道の仲間から電話があったそうで、今年の年賀状を整理していた娘さんから訃報を知らせてくれたそうだが、ただ衝撃で手を合わすだけしか出来なかった。

「お身体大丈夫ですか?」と何度か電話を掛けてくれた彼女だが、亡くなられてしまっても遺作となったCD「慈曲」は残り、これからも遺族の悲しみを癒し、参列者の心の扉を開けて葬儀の意味を伝えてくれることだろう。

私の自宅には彼女が演奏している映像もあるし、様々な曲が存在している。それらを見聞きしながら彼女を偲ぶことになるだろう。

今日の写真はオリジナル葬儀音楽CD「慈曲」を。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
携帯で下のQRコードをスキャンするか
 または
携帯に下のURLを直接入力します。
URL http://m.hitorigoto.net