本館で行われていた合同葬に参列、メモリアル・コーナーにあったご趣味の世界に感嘆した。ゴルフがお好きだった故人、ご生前の面影を彷彿させるような服装も展示され、その横にラウンドされたあちこちのコースのマーカーのコレクションがいっぱいあった。

　マーカーとはグリーン上でボールをマークする時の目印だが、女子プロ達は挙って帽子に装着した磁石タイプが多い。

　置かれたスコアカードが目に留まった。男子プロのトーナメントで有名なダンロップ・フェニックスをラウンドされたもの。プライベート・コンペで優勝された際のものらしいが、素晴らしいスコアを記録されていた。

　昔、所属していたライオンズクラブがホストとなり、９クラブ合同コンペをあるゴルフ場を貸し切って行ったことがあったが、ゴルフ場側のミスから別にセッティングを要望していたシニアの分をプログラムせず、集計が遅れてしまうというハプニングが発生した。

　 １８０人ぐらいの参加なので、トップスタートと最終組とは２時間半程度の差が生じてしまうが、表彰式が行われる会場で早いスタートの人達からブーイングが 出始めた。そんな時、ゾーンの役員をしていた我がクラブのメンバーが私のところへやって来られ、「助けてくれ。何とか１０分だけ時間を持たせてくれ」と懇 願された。

　こんな時にマイクを担当するなんて災難みたいなもの。説教染みた話でもすれば総スカンとなるのは必定。そこでテーマに持ち出したのがゴルフに於けるニックネームだった。

「皆さん、私は厳しい方から次の三つのニックネームだけは付けられるなと教えられたことがあります。ひとつは『にわとり』で、誰もがご存じのように、ＯＢ近くでボールが見つからないロストボールになるような時、ポケットから卵を産むようにボールを落とす人のこと」

「二 つ目は『西郷隆盛さん』で、クラブを片手にして誰よりも早くセカンド地点やサードショットの地点に行き、もしもディボット跡ボールが入っていたら、クラブ で外へ出すという人物。遠くから見ていると、ちょうど上野の公園の西郷さんが犬を連れているような姿に見えるところから名付けられたのです」

「そ して３つ目ですが、これは、少しテクニックを要する行動になっています。グリーン上で『プツッ』と突き刺すようなマーカーを一切使用せず、コインタイプを 用意し、誰よりも早くグリーン上に行き、マークする際に指でコインを弾いて飛ばすところから『銭形平次』と呼ばれているのです」

そんな話で場を持たせていたら、何とか集計が出来たようで幹事が「助かった」と言ってマイクを交代した。

　それは、会場で大受けとなり、閉会して帰られる人達から「最高だった」と握手を求められた方が十数人おられ、役員さんから二次会へ招待された出来事だった。

　 さて、日課で訪問している「幸せ列車」だが、「かめかむか」さんのコラム「残り時間という魔法」の内容が面白かった。待ち時間を知るだけで行動パターンに 大きな変化が生じるというようなものだったが、葬儀の司会という世界で、それに似たサービスコメントを発していたので紹介申し上げる。

　昔、ある日の午前中に区役所から電話が入った。地域の会館で行われている葬儀に市長が参列するが、何時頃に焼香となるかという問い合わせだったが、瞬時に「1時２６分です」と答えたら「エッ！」と驚かれてしばらく沈黙タイムとなった。

午 後1時から行われる地域の重職にある方の葬儀だったが、お通夜に参列されたご親戚の方々の人数も把握しており、代表者指名焼香の凡その順位も常識的なも の。そこに宗派の差定（さじょう・・式次第のこと）たご導師の読経の速さを理解していたら、市長のお名前を読み上げる時間ぐらいはすぐに判断可能なもの。

　それまでにも、参列される方々に対し、開式のすぐ後に「只今のところ各種団体代表皆様のご焼香拝受のお時間は、午後1時２９分を予定」なんてコメントをしていた歴史があった。

そして当日、区長と市長が到着された。ご公務ということから分単位のスケジュールだったそうだが、市長のお名前を奉読したのは午後1時２６分だった。

それからは、市長が参列される葬儀の司会は私にと、区役所内で内密に広まったという話を知った。

　ただ待っている会葬者の立場と考えると、「１時２９分を予定」なんて言うと「本当かな？」と興味を抱かれ、待ち時間を短く感じられる効果が期待出来る。だから「１時半頃」という「頃」は歓迎されない訳である。