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2002-05-17

びっくりしました  中編  NO 77

深夜の2時を回った時間に客室に呼ばれる体験は、ベテランのホテルマンでも少ない筈。

それも「客室内のバスルームで問題発生」となれば、簡単に想像出来ることではなく、一流と称されるホテル以外では、「明日の朝では」というご発言は仕方のないことだろう。
 
ましてやスイートルームと言えども、宿泊客の詳しい素性まではわからない。それは、担当ホテルマンにとっても「恐怖感」に襲われて当然のこと。
 
客側の立場では、何より現況の確認を願いたいし、隣室の方々など、他のお客様の動向への懸念もある。
 
「誠に勝手なお願いですが、すぐにご来室ください。ご覧いただかなければご理解出来ないことなのです」
 
それから2分ぐらいで担当の方がやってこられたが、ドアを開けた時、ホテルマンのイメージは消滅し、ただ「恐怖に怯える人」という感じがしたが、誰でも彼の立場となればそうなるだろう。
 
彼は、私の着ているシャツがずぶ濡れになっていることだけは知られたようで、バスルーム内でのハプニング、それが何かの確認という時点では落ち着かれていたようだ。
 
人の想像力とは豊かなもので、誰もがシナリオライターのように勝手なストーリーを描いてしまうもの。彼が私の姿を見るまでは、ひょっとして血だらけの姿を想像していたかも知れない。
 
「これは!?」
 バスルームに入った彼は、最初にそう言われ、そこから私が経緯について説明を始めた。
 
「あなたにクレームを言う気持ちはありません。私の願いは、風呂に入りたいということです。シングルでもツインでも何でも結構ですが、他に空室はありませんか」
 
部屋のチェンジをして欲しい。それが私の要望だった。私自身も突然のハプニングに「気持ちの悪い」心情になっている。
 
「生憎、本日は、満室でございまして」
 
その現実では、次に話しが進展することは不可能で、時間が深夜のこともあり、この場での結論を急ぐことにした。
 
「どのようにさせていただいたらよろしいでしょうか?」
 「あなたのお仕事もあるでしょうし、取り敢えず、この実態だけはご理解ください。お風呂のことは諦めました。どうぞ、お気遣いなく。他のお客様のこともご心配でしょうから。缶ビールでも飲んで寝ます」
 
私は、疲れていた。朝早くから大阪を立ち、東京でのスケジュールをこなし、ちょっとご機嫌の居酒屋タイムを過ごした後。彼に伝えた言葉が、私の欲する権利的な立場からの要望であった。
 
彼は、「申し訳ございませんでした」との言葉で頭を下げられ、ご自分のポジションに戻られたが、私の仕事はこれからで、缶ビールを飲むような雰囲気はなく、クロークからハンガーを取り出し、濡れたシャツや下着を乾かすための行動を始めた。

・・・・・・・・・・・・ 明日に続きます。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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