2002-06-30
悩みの解決 NO 121
この数年間、悩んできたことがあった。それは、故人の人生を表現する部分に重要なフォトビデオである。
ご遺族から思い出のお写真をお預かりし、編集を行い、資料映像に被せて創作する訳だが、社葬やホテル葬など日を改めて行なわれる場合は、関係するプロの世界に託することになるが、今日のお通夜、明日の葬儀となれば自社で早急に制作しなければならない。
一般ご家庭の葬儀では、時間の上に限られた範囲の予算という問題があり、コンピューター、デジタル、スキャンを駆使し、短時間で完成することが求められる。
これらのシステム完成には至っていたが、絶対に納得が生まれない問題を、お客様と私の両者が抱き、これまで、ずっと悩んできたのである。
それは、音楽。ビデオのBGMに対する不満であった。
お通夜や葬儀の場で流されていた音楽。それは、ご遺族の脳裏に焼きつくこととなり、ビデオに最初から挿入されている音楽では致命的な欠陥ということになる。
ましてや、弊社の場合は、スタッフ達が取材の元、故人の人生表現のためのオリジナルナレーションを創作しているところからも、式場で司会者が「生」で対応 してきた生い立ちナレーションを、差し上げるフォトビデオに挿入したいという考えが強く、すべてのお客様からもこのご要望が生まれていた。
1週間前、そんな私の悩みを知られたあるプロの方が、信じられないようなビデオ編集器材を恵贈くださった。
大きな喜びを抱き早速取り組んではみたが、何と言ってもプロ仕様。我々素人で活用可能なレベルではなく、説明書の中に登場する専門的語句さえも理解出来ない有様。
ビデオ、編集機材、音源となるCDコンポ、そしてアンプとマイクなどのセッティングを行い、私の隠れ家である部屋での戦いが始まった。
「音楽スタート」「フェードアウト」「バランスチェック」というような言葉が飛び交い、何百回もテストバージョンが繰り返されたのは言うまでもない。
それから3日目、「やった」という瞬間があった。どうやらうまくいったようで、編集用機材で放映して見ると、見事に流れてくる。スタッフ達の顔がほころぶ。
ところが、そこから信じられない問題が発生した。プロ仕様の機材では映像、音声とも流れるが、一般的なビデオシステムでは音声が流れて来ないのである。
また、2日間の戦いが始まった。そんな中、今日は嬉しい訪問者があった。音響と照明のプロの来社であった。
彼は、我々素人にでも対応できる編集方法を、持っていた小さな「ミキサー」ひとつで完成させてくれ、その機材をプレゼントくださった。
録音レベルが不明というシステムで、勘を頼りに2回のリハーサルで録音本番となったが、幸いにもNGはなく、確実にご満足に至る完成品となって収録されていた。
BGMは、葬儀当日に使用されたオリジナルCD「慈曲」から2曲を選曲し、ナレーターは、私が担当した。
「失礼ですが、こんな普通の部屋で、こんな機材で、こんなビデオが一発で完成するとは驚きです。完成品は、私にも満足出来るレベルですよ」
そうおっしゃってくださったお言葉が嬉しく、スタッフ達は、早速、完成品の配達に、ご遺族のご自宅へ向かった。