2002-12-21

面接から    NO 290

就職難からだろうか、弊社のような会社に多くの問い合わせがある。

 ハローワークからの紹介もあれば、ご自分でアタックされて来るケースもあるが、その大半がHPからの行動であるようで、中にはメールで資料請求を求められることもあった。

 特徴的なことに、4回生や3回生在学中という人もあり、訊いてみると、そのすべてが葬祭業界を成長産業と見ているようだ。

 前にも書いたが、葬祭業界は、確実に斜陽産業。その判断なくして企業選択は難しく、便利な情報入手手段であるHPは、客観的な考慮の必要があると思っている。

  それにしても、履歴書の字が踊っているのが多い。「踊る」が「躍る」なら歓迎だが、パソコンの発展による影響は想像以上で、美しい文字との出逢いが極端に 少なくなっているし、志望動機を求めても文章表現が拙く、日本の文化の衰退を憂うと共に、我々葬祭業界に対する社会認知が低次元であることを認識すること になって寂しい。

 ある日、1通の履歴書が送られてきた。大手葬祭業者に8年間の勤務実績があり、特技として「幕張」と記されていた。

 人事担当者が面接した時、「幕張は一切役立ちません」「これまでの経験がほんの少しだけしか役立たちません」と伝えたが、ご本人には納得が生まれず、このままでは誤解が生じる恐れがあると判断したのか、私に面接担当が回ってきた。

 この方が葬儀という仕事にどんな情熱と誇りを抱いておられるのか興味を抱き、私の隠れ家に迎えることになった。

 30分ほど、聴く側の立場に徹して伺ってみると、この方が経験された8年間は「作業」の歴史であり、葬儀という「仕事」に従事されていたとは到底感じられなかった。

 「絶対に成長産業です。間違いありません」

 それは、「今後の葬祭産業をどのように捉えていますか?」に返ってきた言葉。この方もやはり高齢社会到来の死亡者数の増加しか見えていなかったようだ。

 そこで、私は、21世紀の葬儀というタイトルのビデオ映像に続いて、弊社が現在行っている実際の葬儀の映像を見せることにした。

 20分ほどのビデオの時間。彼は、ひとことも言葉を出さず、目を輝かせながら食い入るように見入っていた。

「幕張の技術が役立ちますか?」「これまでのご体験が役立ちますか?」

 それは、とても「キツイ」言葉であっただろう。

「役立ちません。私の祖父母の葬儀があったら、是非御社にお願いしたいと思いました」

 彼が勤務されていた大手葬儀会社は、今、厳しいリストラ態勢に入っている。50人の希望退職を求めているとも伺った。

 やがて、ビデオの感想として、「こんな『かたち』の葬儀。これからは、この時代だ」とおっしゃったが、この部分では、彼と私の考えが一致した。
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