2005-01-10

デリケートかな?  NO 1032


 午前3時に電話が鳴っている。相手様は昨年に事前相談で来社されたお方。17年前に私が司会を担当したことがあるご当家。100歳を迎えられたお方がご逝去、朝から今回のご要望に関する指示をスタッフに伝えておいた。

 私でないといけないお客様の事前相談には、出来るだけ「ご安心」をと願って携帯電話の番号をお伝えすることが多く、深夜の電話で生活リズムが狂ってしまうのも仕方がない。

 100歳に<肖りたい>と願いながら司会を担当するが、今夜から数日間の冷え込みが厳しいようで心配だ。

 そんな体調を整えるには銭湯が何より。そこでめったに行かない時間帯に銭湯へ。

 中はガラガラ。<貸切だ>と思いながらタオルを頭に載せ電気風呂。気持ちよく浸かって目を瞑っていると、いきなり「兄ちゃん」という声が。

 びっくりして声の主を見ると、隣の町会におられる顔見知りのお爺ちゃん。過日の葬儀に参列されていた経緯もあり、「あの日は寒かったなあ」から会話が始まった。

 「兄ちゃん、若いのに電気風呂?どこが痛いのや?」と嘲笑的なお言葉。「冷えから足腰が」とお返しすると、このお方の大腿部の傷についての昔話を拝聴することに。

 それは、軍隊時代に中国で被弾された傷痕。「男の勲章や」と自慢げにおっしゃられたが、「これが冷えると疼いてな」と、お辛そうな本音に同情を。

 そこから話題が急変、過日の葬儀について始まった。「なあ、兄ちゃん。あの人生物語りやけど、ええなあ。わしの時も頼んどくで」

 それは故人の人生を語ったナレーションのことだが、会話がまるで取材モードになってきた。

  「この傷痕のことも言うてや。それから多くの戦友達が亡くなったことも言うて欲しいな。戦争は地獄やった。生きて還れたことが不思議なぐらいや。傷が痛む と戦友のことを思い出して心も痛むのや。彼らは電気風呂やサウナなんて全く知ることもなく戦死した。新幹線が走っとるなんて信じられんやろうなあ」

 相槌で応えていた私だが、どうものぼせ気味。<洗い場に逃げ出したい>と思いながらしばらくお付き合い。次にタイミングを合わせて隣接の小さな湯船の中に移った。

 いつもバスクリンや蓬湯となっている湯船だが、今日は紅色で「火龍薬湯」と書いてある。これは唐辛子と生姜のエキスが入ったものだが、お爺ちゃんと話しながらとんでもない問題が発生。

 飼い猫の爪で負った昨夜の傷がピリピリ。続いて恥ずかしい話だが、肌の敏感な部分が耐えられない状況に。「ちょっと失礼します」と飛び出したら大笑いをされた。

 過去に何度か「火龍薬湯」に入っているが、今日はどうやら薬剤の量が多かったみたいで、初めて体験した強烈な痛さだった。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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