2005-10-04
ひとこまの背景に? NO 1291
弊社HP内のリンクページに接続の「出たとこ勝@負ログ」さんの最新号に、私好みの記事があった。
アメリカのスタンフォード大学卒業式で行われたアップル・コンピュータ社のCEO、スティーブ・ジョブス氏のスピーチについてだが、我が国内で行われている祝辞などの挨拶に「お見事!」と賛辞するケースは希で、欧米諸国のスピーチ技術を学んで欲しいと願ってしまう。
過去に政治家のパーティーや知事、市長を支援する会合に何度も出席したことがあるが、支持者である役員とのシガラミで仕方なく参加する中、楽しみはそれぞれの方のスピーチ。しかし、「うまい」と思った人は残念ながら少ないので寂しい。
それぞれの方に秘書の存在がある。また、元校長という方々が筆耕のような立場で従事されていることもあり、スピーチ原稿を書き上げてくれている筈なのだ が、書いた本人のスピーチ力が低かったら内容そのものがお粗末だし、それを読み上げる人物の話術が拙いとなれば最悪となってしまう。
ア メリカ社会には日本に少ないビジネスがある。急成長してきたスポーツ選手などに近付いてきて「あなたに私が必要な時期が訪れた」と持ち掛ける。彼の仕事は 選手がインタビューなどに対応する模範コメントの作成で、いかにマスメディアを通じて好印象を与えるかまで分析し、そのイメージアップから企業CMのス ポットライトにまで結びつけるプロ達である。
ゴルフを一例で考えてみると分かりやすいだろう。決勝ラウンドに進んで思わぬ上位に顔を出した無名選手があったとしよう。
「今日、ホールアウトをしたらインタビューがくるだろう。スタート前にこれを読んで覚えておけ」
そう言って手渡されたメモには1位、2位、3位の場合それぞれのコメントが用意されている。謙虚な言葉もあるし、熱く語る言葉やジョークもある。そして、 その言葉の組み合わせこそに心理作戦が秘められており、スポーツニュースを観る視聴者に好印象を与えるシナリオが描かれている。
記者やリポーター自身もそんな彼らの存在を知っており、どう答えるかと興味的な駆け引きを仕掛けてくるぐらいで、そこでの失言は大きなビジネスチャンスを消滅させてしまう危険性もある。
そんな社会で切磋琢磨される彼ら、有名選手になれば服装のコーディネーターからコーヒーの飲み方まですべてを管理してくるのがプロの世界、何気ない仕種に要注意と細かい指示も。
横綱が6連覇を果たした先の場所だが、琴欧州が大事な取り組みに破れ花道を下がっていく時、その後ろ姿をテレビ画面が映し出していた。その先に弟子を相手に気合を入れる横綱がはっきりと見えたが、琴欧州はその横を無言で通り過ぎて行った。
その時、立ち止まって横綱に一礼をする光景があれば、どんなにイメージアップにつながるかが理解できるだろうし、間違いなくファンが増える筈。勝負だけに固執せず、大横綱を目指すなら、そんな余裕も大切なように思う。