2003-01-19

悪  名    NO 318

昨日の朝、地方に在住する親戚から訃報が入った。取り敢えず「生花」のお供えを託することだけ済ませたが、これが、思い掛けないことになってしまった

 私の個人名で供えられた供花。その葬儀を担当されていた葬儀社さんが「まさか、大阪高級葬儀さんでは」と確認されたそうで、「やはり」という事実に進むと「割引」という言葉を出されてきたと言うのである。

 どうも、珍しい名前は得をするようだが、全国で講演活動をしてきた私は、葬祭業者さんの世界では知名度があり、ただそれだけの同業者という関係で「割引」を願う気持ちは毛頭なく、鄭重にご遠慮いただくことになった。

 供花は、「供養」であり、値引きなんてもっての外。そんなことをすれば故人に申し訳が立たず、恥ずかしくて祭壇のある式場に並べる権利が消滅する。

 しかし、こんな私のことを知っていてくださったことは満更ではないのは事実。夜に掛かってきた電話では、この「独り言」の訪問者でもあると聞き、背筋が凍る思いをすることになった。

 取り急ぎ、「葬儀をよろしくお願い申し上げます」「独り言のご訪問、恐縮です」「こんなことを書いてしまって申し訳ございません」と、ここで一筆申し上げます。

 さて、今日のこの事件で思い出したことがある。

 数年前の話だが、ゴルフで交友があった人物が亡くなり、奈良県での葬儀に参列した時のこと。

 お寺の山門の所に設けられた受付を済ませ、境内のテントの中へ入ろうとした時、接待を担当していた女性が私を見つめ、すぐに式場の奥の方へ駆けて行った。

 しばらくすると、名札を着けられた年配の方が来られ、「大阪の久世さんですね」と言われた。

 私が故人とのつながりについて話すと、その方は、自分が葬儀社の社長であることを告げられ、「昨日にでも分かっていましたら特別なサービスが出来ましたのに」とおっしゃられた。

 この業界は、何かつながりがあるとすぐに「サービス」という言葉が登場する。(それでいて、サービス業界には程遠いと言われているが)

 それから5分ぐらいして、問題が発生した。社長から私の参列を耳にした司会担当者が、「やりたくない」と言い出したそうである。

 社長は、再度、私に近付いて来られ、「司会を代わっていただけませんか?」と深刻な眼差し。続いて、「遺族にも承諾を得てきますし、その方が故人も」

 私は、そこで社長さんの言葉を制する行動に出た。これは、拙いこと。このままでは大変なことになってしまう。そう思った私は、「ご出棺だけお見送りします。それまで、近くの喫茶店でも過ごしていますから」と返した。

 ピンチヒッターは簡単なことだが、それはよいことではないだろう。故人の関係からすれば許されることかも知れないが、ここはやはり1歩下がるのが道理。

 それが良いか悪いかの判断は、考えたくないので未だに結論を出していない。しかし、こんな問題を何度も体験している私。ひょっとして罪作りな「悪名」なのかも知れないと思っている。
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