2002-08-04

ビジネスの前に・・考えてね   NO 155

毎日、多くのダイレクトメールが配達される。差出人を確認しながら、CMイメージの強い物は、私が直接には目を通さないことにしている。

 ある航空会社からのビジネス案内文書があった。この会社はセスナやヘリコプターを中心とする会社で、「新しいサービスを始めました」とパンフレットが同封され、海上への「
散骨には是非」とあった。

 それから数日後、突然、その会社のセールスが来社され、たまたま事務所にいた私は、その人物に15分間のプレゼンの時間を与え、どんなサービスシステムが構築されているのか、また、現在に至るまでのプロセスについて拝聴することにした。

「プレゼンの時間を、それも社長さんに直接お会い出来るなんて」と言いながら、彼は熱い思いを語り出した。
その間、パンフの隅々まで目を通しながら聞き入っていた私は、やがて質問を始めたが、彼は、すぐに顔面蒼白の状態に陥ってしまった。

「お骨は、誰が粉砕するの?」「粉砕する機材はあるの?」「散骨に飛んで、悲しみの遺族が事故に巻き込まれたらどうするの?」「遺族が空港へ来られた時、スタッフはどんな服装で迎えるの?」「そこでどんな儀式が行なわれるの?」「ご遺影の扱いに付いての考えは?」

 質問をしたいことが山ほどあったが、その時に訪ねてみたのはそれだけだった。

 彼の航空会社が構築したサービスシステムは、セスナやヘリコプターを飛ばすだけのこと。その他は何も考慮されていないという現実であり、お粗末なビジネス提案には淋しいだけではなく腹まで立ってきてしまった。

 海上への散骨をビジネス提案される葬祭業者さんが増えているが、クルーザーで沖合いに乗り出すこともいいだろうが、出発までのセレモニーこそに意義があり、それなくして散骨する行為は「海洋投棄」でしかなく、もっと真剣に考えなければならない筈だ。

 数年前、私が担当した葬儀で、故人が瀬戸内海の生まれで、瀬戸内大橋の辺りの島で漁業をされていたこともあり、クルーザーか漁船を手配し、散骨をしたいと奥様から懇願されたことがあった。

 立派なクルーザーやヨットを有している私の友人達に頼めば簡単なことだが、私は、敢えてとんでもない提案をすることにした。

「海 洋への散骨は、故人に対するご家族の思いでされることであり、ご家族だけで内緒で行なわれることも許される筈です。今の時代、自由葬、樹木葬、海洋葬など の言葉が流行しており、中には法的な論議まで進んでいる事実もあります。例えばの話ですが、皆さんが追想旅行でも計画され、大型フェリーから瀬戸内大橋の 下辺りで散骨されるのはいかがですか?」

 瀬戸内を通るフェリーは多くある。大洋フェリー、関西汽船、阪九フェリー、ダイヤモンドフェリー、また、四国航路のオレンジフェリーもある。往路か帰路で通過する時間も異なるだろうが、これも立派な散骨ではなかろうか。

 そのご家族は、実際に決行された。午後8時頃に瀬戸内大橋を通過する便を選ばれ散骨。九州で1泊され、帰路は飛行機。後日にお土産を持参され感謝のお言葉を頂戴した。

 故人にゆかりある場所への一部の納骨。それは、その意味を理解される方々の範囲内で、秘密でされてもいいのでは。それが私の本音であり、法的な権利云々や、堂々とビジネス展開され、漁港の漁師さん達の抵抗感と勝負する必要が何処にあるのだろうか。
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