2002-05-18

びっくりしました    後 編    NO 78

ベッドに入ったのは、3時半頃。<蛇口が吹き飛んだのは、水圧からなのか>
 
<大きな「ガァーン」と聞こえた衝撃音は、蛇口が天井に当たったのかタイル壁に当たったのか>と、様々な想像をしてしまったが、私は信じないタイプの人間だが、オカルト的なことまで推理をめぐらし、気持ちが悪くなったことも事実だ。
 
転寝で朝を迎えた。このホテルを提供してくれた人との約束の朝食時間。髭もそらずに1階のレストランに下りていった。
 
「おはようございます。よくお休みになられましたか?」
 
先に来られていたその方は、昨日と同じで元気そうな挨拶をくれたが、深夜に送ってくれた時のことを思い、事情には触れずに「齢を感じる年代のようです」と応えてテーブル席に着いた。
 
バイキングスタイルのレストラン。食欲のない私の料理皿を見ながら、いつも敏感な彼は、「何かあったんですか? ご体調でも?」と心配そうに問われる。
 
考えてみれば、彼がホテルの支払いをしてくれるのである。それも、よく利用されるホテルで、請求書送付による後日払いであることも知っていた。
 
私は心の中の葛藤を整理し、彼に事実を話すことにした。
 
宿泊者以外を部屋に迎えることはご法度だが、これだけの事情があれば許されるだろうし、フロントの了解を得ずに彼と共に部屋へ入った。
 
彼は、名探偵が現場検証するように、細部に亘ってチェックをされ、私が語った深夜の成り行きまで知ると、「錆びていますね。それで外れて水圧で吹き飛ぶ。その後は当然、噴水」と結論付け、「驚愕と水害だけで済んで、よかったですね」と結んだ。
 
この後の対応をどうするか、それだけは決めておきたく、このホテルにつながりを持つ彼の意見を尊重する姿勢で話し合った。
 
彼と私は同業で、全国のホテルでの仕事に同行し、一般の方々よりはホテル事情に精通し、我々の勉強のためという結論で我々側からクレームを出さず、ホテル側の対応を確かめてみようということになった。
 
やがて、チェックアウトの時、フロントには3人のスタッフがおられ、キーを返却するとき「お世話になりました」と言うと、深夜に恐怖の姿で部屋に来られたスタッフもおられ、黙って頭を下げられていた。
 
今回の宿泊に関する費用は、2,3日後に済ませたと報告があったが、ホテル側からの行動は何もないという状況も伝えられた。 
 
それからの仕事の打ち合わせ電話では、ホテルに関する話題が必ず加えられることとなったが、1週間を経過しても何の行動もないそうで、彼は、徐々にヒートアップ、「抗議に行っていいですか?」と切り出された。
 
私はストップを掛けた。彼の気持ちは理解出来るが、被害者は私である。被害者優先の法則だとの言葉で制し、私が一筆をしたためることになった。
 
事の顛末は、A4で3ページに及んだ。事件のあらましとその後の経過は、ドラマ風に書いた。私の人脈から、送り先をそのホテルを統括されるホテル事業本部とした。
 
し かし、文章表記の中には、恫喝的な表記、金品強要というイメージは一切書かず、原因究明の報告の義務に付いてお願いをすることにした。もしも、他の部屋で 同じような事故が発生し、被害者が生まれたらホテルだけではなく、私も責任を感じてしまうという心情に併せ、ホテルを提供してくれた立場にある彼の困惑の 状況も伝え記し、投函した。

 ・・・・・・・・その後の顛末、明日に「番外編」として続きます
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