2003-04-18

司会者の研修     NO 403

神戸の若いメンバーが隠れ家にやって来たのは、午前10時。いささか緊張している様子を感じたが、これまでに北海道や大阪の研修会でも顔を合わせており、弊社のスタッフ達と和やかに挨拶を交わしていた。

 研修を始める前に確認したことがあった。それは、自分が在職している会社に対する思いで、「葬祭業が好きです。公詢社を愛しています。骨を埋める覚悟で働いています」と断言された姿勢に、経営者の立場としてエールを贈ることとなった。

  声質、品、技術、創作力、表現力、環境洞察力などを含め、司会だけではなく、プロデュースに於ける国語と社会の一般的常識の重要性を説き、基礎の部分から 研修を始めていったが、私が編み出したオリジナルなカリキュラムをベースに進める中、やはり関西特有のイントネーションという問題にぶつかった。

 そこで修正する方法として、五線紙上の音符をイメージする手法を伝えたので解決するだろう。

 途中で女性スタッフ2人が入り、互いのナレーションの比較も行ったが、こんな時に生まれる緊張も貴重な研修体験という材料になる。

 「司会は好きか?」と訊ねると、「大好きです。うまくなりたいのです」と目を輝かせる。

 司会の勉強で最も単純明快な近道は、自身が憧れる喋りを参考にして真似ること。テープやビデオで何十回も聴いていると、勝手にイントネーションやムードまで似て来るもの。耳からだけの自然入力で60パーセントぐらいまでの進歩が可能。

 それに併行して様々な文章を声で実際に語ること。そして時折に修正のチェックを受けること。その努力さえすれば耳障りな口調が消えている筈。

 彼は、私が司会を担当していたホテル社葬の音声を持っている。それを「お題目」にしてくれれば半年後には見違えるような進化を遂げるだろう。

 「謙虚になりなさい。今日から出発です。0点から始めなさい」

 そんな偉そうなことを言ってしまったが、10種類ぐらいの喋りの変化を聞かせると誰でも混乱を来すもの。しかし、それらが数日で頭のどこかで甦ってくる。その時がステップアップの機会でもある。

 「壁にぶつかったらやって来なさい。成長したと思ったらやって来なさい」

 その言葉で見送ったが、彼は、帰社報告できっと困っている筈。勉強したことが逃げ出さないように心の扉を閉め切っている状況。それらを整理して報告することは簡単ではない。これらは体験したものだけが理解出来るもの。

 「うまく表現出来ないのですが、一回、研修を受けてきてください」

 彼は、ひょっとして、社長にそんな報告をして叱られているかも知れないが、次回にやってくる時のことを楽しみにしている。
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