2002-11-25

七 五 三     NO 266

20数年前に、ある団体に入会することになった。そのメンバーは十数人であったが、すべての方が自転車産業を経営され、フレーム、サドル、グリップ、タイヤなど、様々な関連部品を製造される企業のオーナーだった。

 月に一回の集いがあり、年に1度の旅行も楽しみ。非常に出席率のよい会であった。

 その中にいた友人の縁で入会ということになったのだが、初めて出席をして名刺交換をした時、まったく読めない苗字の方がおられた。

「七五三」という苗字で、「しめ」というお読みするそうだが、誰も読んでくれないと言われていた。

 さて、子供が誕生してからしばらくすると「宮参り」の神事があり、神社に参拝することになるが、生まれ立て子供の記憶に残ることはないだろう。

 仏教にも浄土真宗では「初産式」という仏事があるが、これをお受けにお寺に行かれることは稀だと耳にしている。

 幼い子供にとって、初めて神様の世界に接する体験となるのは七五三となるが、私の孫である女の子が非常にやんちゃなタイプで、七五三で大恥を掻いたことがある。

 由緒ある有名な神社に予約をし、本人が「お姫様みたい」という着物を着せ、娘夫婦に伴って神社に行った。

 控え室には数組の方がおられ、中には交通安全祈願や受験の合格祈願の方もおられた。

 予約していた写真館で悪戦苦闘して撮影を済ませ、神社に到着したのが約束の10分遅れ。お陰で次の組に入ることになってしまった。

 やがて巫女さんの案内で手を清める神事を済ませ、広い神殿に座ることになったが、初めて見た宮司さんの服装を目にして「あれ、なーに? なんであんな格好をしているの?」

 こんな光景は、きっと宮司さんも何度もご体験されているだろうが、他の方々に気を遣う。娘夫婦があやしながら困り果てている。

 そんな時、神殿に置かれてあった大きな太鼓が宮司さんによって鳴らされた。直径が1メートル50センチもありそうな大太鼓。その響きが凄い迫力で我々が座る畳に振動して伝わってくる。さすがにこの時だけは静かになった。
 
 続いては祓いの行事。我々の所へ近付かれ半紙で作られた大きな祓いの神事用具を振られる。「それ、なに?」
 「ご低頭ください」という祭員の言うことも聞かず、娘夫婦が2人で頭を押さえつけている。「痛い。何するの?」という声が響き渡る。

 やがて祝詞の奏上に入った。宮司さんが一段高い所に着座され、祝詞が始まる。「この間、低頭」。これもまた無視。「何を言ってるの?」「お家に帰りたい」そんな言葉に周りで苦笑が聴こえ、早く終えられることを願うばかりだ。

 続いては玉串奉奠だ。名前を呼ばれて親子三人が一段高い所へ上がったが、親が2礼2拍手1礼の神事作法をやれる状況ではない。
 
 しかし、何とかやり過ごした。帰りに頂戴するお神酒と千歳飴のお土産のを頂戴する時は静かだった。

 境内で写真を撮って駐車場に向かって歩いていた時、さっきの宮司さんに会った。
 「お元気なお子様ですね」という言葉で我々全員が頭を下げた。

 受験祈願に効力がなかったら、ひょっとして「あの悪ガキの所為だ」と恨まれないだろうかと心配している。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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