2006-09-10

ノンフィクション!  NO 1623


 この数日、過日に行った講演のことを書いていたが、今日、数名の方からメールを頂戴し、その中に受講者ではない旅館関係者の方から「葬儀社の人がホテルや旅館の人に何の話を?と不思議に思っていましたが、よ~く分かりました」というのがあり御礼の返信を。

 また、リンクのページから結ばれているブログ「出たとこ勝@負ログ」さんからも「近日に引用します」とのメールが。恐縮しながら「何なりとご自由にお書きいただければ」と手を合わせる。

 さて、最近の犯罪は複雑化してきており、知らない間に誰が巻き込まれてしまうか分からない危険性が高まっているようだが、今日は、実際に知人達が遭遇した事件を「ノンフィクション」としてしたためることに。

 ちょっと飲み足りない感じから「もう一軒行くか?」と1人が提案したことが事件の入り口。場所は、大阪でも有名なサラリーマン中心の歓楽街であった。

「最後の仕上げはラーメンか讃岐うどんだ」という意見もあったが、3人が暖簾をくぐったのは鉄板焼き。10席ぐらいのカウンターがある広島風ネギ焼きが評判の店だった。

 彼らが座ったのは奥の席、先客に「ごめんなさいね」と声を掛けながら、狭い後ろを通って着席。注文を済ませるとスーツを後方の壁に掛けて生ビールを飲み始めた。

 エアコンが壊れそうな音を立てているが、何と言っても夏の鉄板焼きの店内の暑さは尋常でなく、店のオバサンに「ビールの本数アップを考えているんでしょう?」なんて嫌味の言葉で盛り上がり。

 それぞれの注文したものが出来上がり、器用にテコを使って食し始めてから15分ほど経った頃、鉄板の上にはまだ半分ぐらい残っている状態なのに、突然4人の若い客が飛び込んできて彼らの後方に立った。

いきなり「何分ぐらいで席が空く?」という失礼な質問。おばさんが不機嫌そうな表情
で「空いているのを確認してから入ってきてくださいよ」と返すと、彼らは「後で来るから」と出て行った。

 もうお分かりの方もおられるだろうが、この時点ですでに犯罪が行われており、壁に掛けた上着のポケットから財布が抜かれていたということである。

 そんなことを誰も感じなかった店内だが、やがて事件は意外な展開を見せることになった。店の電話が鳴り、おばさんが対応しながら奥の3人の内の1人の名前を呼び出したのである。

 この店にいることを誰も知らない筈だが、おばさんが確かにフルネームで呼び、電話の相手が警察であると言い出したところから店内がシーンとなった。

「** ですが、どういうことでしょうか?」と始まった会話。「**さんですね。**警察です。実は、あなたの財布を盗んだ男を逮捕しております。壁に掛けてあっ た上着から掏り取ったようですが確認を」言われて絶句した彼、他の2人にも促しながら内ポケットを確認。財布をズボンのポケットに入れていた2人に被害は なく、呼び出された本人だけが被害に遭っていたことが判明した。

「確かに財布がありません。助かりました」と言うと「しばらくしたら確認にそちらへ連行しますのでよろしく」と電話が終わった。

 店内に安堵感が生まれ、その話で持ち切りになったが、本人はカードも入っていたので心配だとも言い出し、そこで「逮捕されたから大丈夫だろう」と慰めの言葉で収まる。

 それから10分ほどしたら、また電話で呼び出された。今度は銀行だと言う。そのやりとりはこうだった。

「** 銀行です。**警察から電話がございまして、お客様のカードを掏り取った犯人を逮捕したとのことですが、すでにカードの磁気から暗証番号をはじき出したよ うで確認をということです。まだ被害には至っておりませんが、当銀行といたしましては、お客様が本当の持ち主であるかどうかの確認が必要でございまして、 暗証番号を仰っていただき確認をいたしたく」

 そこで暗証番号を答えてしまった彼。それから何分待っても警察は来ず、実は、警察も銀行も犯行者達が演じていたという手の込んだ事件。掏り集団が振り込め詐欺のテクニックを用いて暗証番号を聞きだしたという頭脳的犯罪の被害に遭っていたのである。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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