2012-05-26

故事?  NO 2937


 梨園で名跡を継ぐ後継者が「『名』を継ぐ継ぐのではなく『命』を継ぐこと」だと語っていたが正にその通りだろう。あの酩酊して暴力事件を起こした人物とは異なる名跡なので誤解のないよう。

 そんな彼が親鸞聖人について著す文書があることを知った。往生要集に強く興味を抱いたそうで呼んでみようと思っている。

「あの世」の存在を信じないどころか話題にさえならなくなった最近だが、年寄りが孫に聞かせる「あの世」の物語は貴重なもの。幼い頃から悪いことをしてはいけないことを自然に学んだ耳学問も、核家族時代の到来で希薄してしまったようだ。

 我が日本の国の誇りは「恥の文化」という学説があったが、今や「羞恥心」という言葉も死滅しつつあるよう。昨日の大阪環状線の中、優先座席で堂々と携帯電話で喋っている人物もいたが、結構高齢の女性だったので残念に思った。

  公共の交通機関で携帯電話の受信音が鳴るなんて非常識も甚だしいが、マナーモードでの対応にも人柄が滲み出るもの。一切応じない人。「今、電車の中。降り たら電話するから」とだけ返答する人。周囲を気にせず会話を始める人など様々だが、そんな人物に限って危険な人が多いみたいで、正義感から注意をする行動 は抑えた方がよいと友人が教えてくれた。

 怒りを抑えるには「哀れみ」を抱くことだそうで、<気の毒な人なんだ>と考えるだけで随分と治まるのだから不思議である。

 となると、自身が「哀れみ」を感じられていないのだろうかと考えることも大切ではないか。日頃の自身の行動や言論について振り返ることも重要である。

「人の振り見て・・」という格言もあるが、先人は多くの教訓を残してくれている。昔から「中国故事」が好きだった私。恥ずかしくも書いた小説のタイトル「葬儀屋七万歩才のあの世の旅」は「七歩の才」に因んだものだった。

僅かな文字の裏側に秘められた壮大な物語。そんな故事に惹かれて様々な書物と出会ったが、それは今でも脳裏に焼きついており、時折に変な感想の言葉として濁してきたこともあった。

 こんなことを書いたら叱責や軽蔑されるだろうが、もう時効となったと勝手に判断して吐露しておこう。

  随分昔のことだが、交流するグループの中に絶世の美人がいた。彼女はある大企業のトップの愛人として誰もが知っていたが、そんな彼女に見境なく惚れてし まった友人から「お前はどう思うか?」と聞かれて答えたのが「傾国」という言葉。それは「警告」という意味も併せていたが、帰り際に「秋扇」という言葉を 伝えておいた。

 彼は、その意味を知る由もなかったが、それから1年も経たない内に彼女がそのトップと縁が切れた際にその意味を初めて知ったそうだ。「秋扇」とはその文字の表す通りのこと。「必要でなくなった」「捨てられた」と言う意味である。

 幸いなことだが、そんな彼は別の美人を妻としており、「熱が冷めてよかった」なんて涼しげに語っていたのを憶えている。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
携帯で下のQRコードをスキャンするか
 または
携帯に下のURLを直接入力します。
URL http://m.hitorigoto.net