2002-12-17

こんなことも   NO 286

社葬を行う場合にも様々な形式がある。密葬、本葬と分けるケースと分けないケースがあり、分けないケースでは1回だけの葬儀、告別式となる。必然としてご出棺があるということになるが、この場合、会社とご当家の合同葬ということで進められることもある。

 弊社が密葬と本葬の両方を担当させていただくこともあるが、他社で密葬をされ、本葬だけを弊社が担当するということも少なくない。

 そんな後者のケースで、会社側から思ってもいなかった提案が持ち出されてきたことがあった。

 社葬が行われる日の2週間前頃のことだった。総務部長からお電話があり、担当者が呼び出されて行ってみると、社葬当日の司会を総務で担当しますとおっしゃったのである。

 これには、そうなる伏線があった。弊社が提出した社葬企画書の中に、重要コンセプトとして「会社の総意で社葬を行っているイメージが重要で、式次第に関するお手伝いで社員の方を10人選抜いただきたい」と提案していたからだ。

 厳粛な儀式空間の完成に向けてのシナリオに、社員の方々が式次第の中で登場いただくことは、これまでに何度も行っているが、非常に高い評価を頂戴しており、社葬の意義を高める相乗効果につながり、我々プロの短時間のリハーサルで完成することが可能であった。

 「司会は、会社の総務が」

 そして、そのお考えが生まれてきた背景には、もうひとつ要因となった事実が秘められていた。密葬に問題があったのである。

 密葬を担当された葬儀社さんの司会が拙く、そのイメージが強烈で、勝手な推測の流れに社葬プロジェクトスタッフ内で、「司会は、総務」というシナリオで席巻されてしまっている状況だった。

 伺ってみると、総務に司会の上手な方が確かにおられる。社員の結婚披露宴や会社の記念式典などの司会を経験され、その技術ある存在感は社内の誰もが知っておられた。

  さて、葬儀の司会だが、トークの技術だけではどうにもならない。全体のシナリオを完全に把握し、関係スタッフをタイミングよく動かせていかなければなら ず、プロデューサー、ディレクター、式場責任者、奏者達との連携が最も重要で、ここに宗教者の存在があることを考えると、葬儀社が司会者の横に付いて 「キュー出し」をする程度で成功することは絶対に不可能なこと。

 やがて、弊社の担当者が、私に対して「完全なシナリオを創ってください」と懇願してきた。彼は、そのシナリオを与え、儀式調、アナウンス調、ナレーター調など、少なくとも5種類に区分けされるトーク技術の必要性を訴える作戦に出るようだった。

 しかし、それは、私の勘違いであった。彼は、そのシナリオと共に、私が講演で使用する「久世栄三郎の世界」というビデオを持参していたのである。 

 それから、2日後、総務部長から次のようなお電話があった。

「誠 に失礼この上ないことを申し上げました。なにとぞお許しください。司会を予定していた本人も、私を始め総務一同も、御社にすべてをお任せすることに決定い たしました。尚、ビデオを拝見いたしました弊社の社長からは、くれぐれも失礼を詫びるようにと叱責されることになりました。よろしくお願い申し上げます」
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