2002-12-16

スタッフの「独り言」    NO 285

大阪のお通夜は、午後7時からが一般的。全国では、5時、5時半、6時、6時半からというところもある。

  今日の大阪は、夕方から雨が降り、お通夜の最中は大雨。ご弔問に来られた方々には、さぞかし大変であったものと拝察申し上げるが、今晩、私が担当してきた 式場は、大阪市立の葬祭式場「天空館」で、地下の駐車場から濡れずに入ることが出来、式場空間が広く、中にお入りになられた方々が落ち着いて着席可能なス ペースがあり、静かなお通夜のひとときが過ごされ、たまたま、この式場がお客様に提供出来ることになってよかったと思っている。

 今日のお客様は、過日にお礼状を頂戴したお方のご親戚。偶然に同じ式場となった訳だが、すべての打ち合わせを終えた担当スタッフが帰社したのは昼前。それからメモリアルコーナーのお写真編集とビデオ編集が始まったので大変だった。

 顔を覚えていただいているところから、前回と同じ男女ペアのスタッフを担当させたが、昼過ぎ、事務所内で担当責任者である部長の携帯電話が鳴った。

 一瞬、彼の顔色が変る。応える会話から大変なことが発生したことが伝わってくる。

「祖父が亡くなりました」

 それが、彼に電話で伝えられたことだった。

「私は、今、大切なお客様を担当しています。この葬儀を終えてから実家へ帰らせていただきます」

 彼は、周囲にいた5人ぐらいのスタッフに向かって、そう言ったが、誰もそれに返す言葉を出すことが出来なかった。彼は、弊社の重要な『人「財」』であり、与えられた責務を遂行する強い責任感を持ったプロなのである。

 彼の辛い思いが誰よりも理解出来る。私は、心の中で手を合わせたが、「お爺ちゃんの納棺を担当してあげたかったな」と言った一言が申し訳なく、どうにもならない世の中の「えにしのめぐり合わせ」を再認識する思いを抱いた。

 やがて、彼は、飾り付け担当のスタッフを伴って式場に出向いて行った。

 私は、故人がお好きだったCDの51曲をすべて聴き、その中から1曲を選曲し、別に故人が新婚時代の頃に録音されたワルツの曲を収録し、6時過ぎに式場に着いた。

 お通夜の勤行が済み、故人を偲ぶひとときが終わり、多くの弔問者がお帰りになられた式場内。我々にホッとする短い時間が訪れた頃、彼が、私に向かって、ふと「独り言」のようなことをつぶやいた。

「不思議な思いです。身内の不幸の中でお客様のお通夜を担当していることが。でも、それが私達の仕事なのですね?」

 私は、小さな声で次のように答えた。

「お 爺さんの葬儀を体験して帰社したら、また、お客様に対する接し方が成長する筈だ。葬儀に従事する者は、喪主を体験して一人前。孫を持つことになって爺ちゃ ん婆ちゃんの気持ちが分かる。それでどうするべきかも変ってくる。辛いけど宿命という貴重な体験かも知れないな。体感に勝るものなしと言っても辛い仕事だ な」

 彼の実家は、京都府。それも日本海に近いところで、特急列車の本数が少ない地域。

「必要なものがあったら何でも持って帰りなさい。私の車を使いなさい」

 それが今日の私に出来ること。ささやかな弔慰と感謝の思いを込め。   ・・・合掌
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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