2002-08-08

アデランス  パート2   NO 159

やがて、書き込んだ問診表を手に女性が部屋を出て行ってからしばらくすると、別の部屋に案内されることになった。

 その部屋にはテレビモニターが置かれてあり、壁には一本の髪の毛を拡大した大きな写真が、額に入れられて幾つか掲示されている。

「いらっしゃいませ。お待たせいたしました」。そう言って入って来たのは35歳ぐらいの男性で、彼も清潔そうな白衣を身につけており、アシスタントと呼ばれる若い女性を伴ってきた。

「ちょっと失礼します」 彼は、ペンライトのようなもので、私の頭のてっぺんや耳の上などの何箇所かを押さえる。そして覗き込んだ数値をカルテに書いている。

「てっぺんは誰でも固くなっています。それに比べて横は柔らかくなっているもので、今、計測したのは頭皮の温度です」

 彼の話しよると、てっぺんの方が幾分に体温が低く、これは血液の流れが悪い証拠であるそうな。そこであらぬ心配が生まれる。

 次に始まったのは一回り太いペンライトの登場で、それはビデオカメラの機能を持っていた。

「この状況がお解かりになりますか?」 そう言われてテレビモニターを見ると、毛根をかき分けて進入しているカメラの映像が、はっきりと頭皮の表面を映し出していた。

「失礼しますよ」 彼は、私の髪の毛を1本抜いた。そして「これをご覧ください」と言うと、カメラを抜いた髪の毛をアップにして見せてくれる。

「如何がでしょうか? 左から3番目のケースに似ていますね。分かりますか?」 

 それは、壁に掲示されていた髪の毛拡大写真のことで、左から3番目を注目するように言われる。

「毛根の部分がそっくりです。まあ、エステとケアをなさることをお薦めします」

 そこから約2時間、体験コースが始まった。最初に連れられて行った所は3面鏡がセッティングされた個室で、美容室のような設備が整い、静かな音楽が流れていた。

 担当ですと紹介された若い女性が、茶色のビンのような物を手に、スポイドで液体を私の頭に付け出した。それはシャンプーの前に施す薬剤だそうで、無臭だが粘っこい感じがするものだった。

 次にシャンプー。シートが倒され、仰向きに寝かされると、やさしく丁寧なシャンプーが始まった。

「リンスですからね」 これも散髪屋さんとは比較にならないほど丁寧である。

 そんな時、別のスタッフが入室し、移動式のロボットシステムのようなものをセッティング。スイッチを入れると掃除機の蛇腹のような管からさわやかな風が流れてきた。

「これは、イオン装置で、高い効果がございます」

 トニックらしいもので頭のマッサージを受けると、続いて肩や首のマッサージも施してくれ、久し振りにリラックス出来たように思う。

    明日に続きます
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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