2002-08-14

インフォームド・コンセント    NO 165

この言い難い言葉が世間に登場し、流行していた時期があり、今や医学界だけではなく一般でも常識として理解されている。

初めて耳にした時、「インフォメーション」「ムード」との勝手なイメージから、無学な私には、「インフォムード」や「コンセプト」の方が伝わり易く、しばらくの間、勘違いをしていた。

この言葉をカタカナ辞典で調べてみると、「医者の十分な説明と同意、ガン告知の是非とも関連する」とある。

 十数年前に通院していた病院の先生は、名医との評判高く、遠方からの患者さんも多く、
腕は立つが気難しいということを誰もが納得をされていたようだ。

 ある時、私の前で診察を受けられていた人が怒鳴られた。その人は、胃の不調を訴えられており、「本当に大丈夫ですか? ガンじゃないですよね?」と訊ねた訳だが、「わしは医者じゃ。患者は黙ってわしの言うことを聞いておれば治るんじゃ」と強い剣幕で返されたのである。

 世間話や冗談を言いながらの診察もされるが、患者の素朴な疑問に対する返しの言葉が強烈で、常連さん達は、だれも逆なでする人はいなかった。

  私は、この先生に随分お世話になった。私の仕事をご理解いただき、「君は忙しい人だ」検査も治療も迅速に対応するとの特別待遇で、ある時、きりきりするよ うな胃の痛みを訴えた時、「すぐに検査だ」とおっしゃられ、検査室で先生自らが胃カメラを担当され、永く苦しんでいた十二指腸潰瘍を発見。その日からの薬 の服用で、現在までの痛みが全くないという恩恵を頂戴し心から感謝を申し上げているが、その時のモニター映像に古傷が10数箇所も見つかり、「斬らの与三 郎だ」とおっしゃったことを覚えている。

 それから1ヶ月振りに診察に訪れた時、先生が偉くご機嫌で、「あなたはとんでもない人だったん だな」とおっしゃる。伺うとゴルフがお好きで、偶然に私の所属するホームコースでプレーをされ、そこで張り出されていたクラブ選手権の予選成績表を見ら れ、私の名前を見つけて驚かれたそうだ。

 「予選を見事に通過していたじゃないか。ハンディが7とはびっくりしたよ。どうだ、わしと一緒にラウンドレッスンをしてくれんか?」

  先生のスタイルは、パターの際にボールが見えないようなお腹が出っ張った体型で、とても教えられるイメージでなく、ご鄭重にお断りをすることになったが、 それからも「1回だけでいいから」と、何度もお誘いを受けた関係から、私にとっては素晴らしいホームドクターの存在という先生であった。

 さて、先生と呼ばれる業種の世界でも「説得と納得」という意識改革が求めらてきていることは確かである。インフォームド・コンセントで医師会に大きな変化が起きた事実もあるが、今、私は、この問題が宗教者の世界に波及していくような思いがしてならないのである。

 葬儀と法要のお経は大切なことだが、檀家とのコミュニケーションなくしてお寺の将来はないだろうと確信している。

 納得をされれば高額なお布施も結構だろうし、無宗教がこんなに話題になることもなかった筈だ。

 インドに生まれた仏教。「印」と「度」の間に「姿勢」である「フォーム」が入れば「インフォームド」が完成する。

 宗教者にもこの言葉が重要になってきているこの頃だと思っている。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
携帯で下のQRコードをスキャンするか
 または
携帯に下のURLを直接入力します。
URL http://m.hitorigoto.net