2003-08-11

参列者からのご質問     NO 512

ホテルでの大規模な告別献花式が終わった。

 撤去作業のスタートを確認するために施主側控え室に挨拶に参上する。

 「有り難う、何より厳粛で、他府県から来られていた人達が『初めての体験で感動した』と賛辞をいだいたよ。ご苦労ですが、どうぞ撤去を始めてください」

 そんなご了解のお言葉からスタッフ達の撤収作業が始まった。

 廊下の受付を片付けていた女性スタッフが、参列された方から何か質問をされている。

 <クレームではないだろうか?>と心配しながら、さりげなく近付いて会話を耳にすることにした。

 「君達は、ホテルのスタッフではないのかね?」
 
 「はい、スタッフではありません。葬儀社のスタッフです」

 「ホテル専門の葬儀会社なのですか? 無宗教専門とか、社葬の専門とか?」

 「いいえ、多くのホテルでお仕事を担当しますが、一般的な町の葬儀社です」

 「司会を担当していた男性と女性は?」

 「弊社の社長と女性司会者です」

 「式場にいたのは、すべて御社のスタッフですか?」

 「はい、ブルーのスカーフを首にしていたのが弊社の女性スタッフ。紺の制服で白い手袋をしていたのが男性スタッフです」

 「あちこちのホテルで社葬に参列したが、こんな形式は初めてだ。感動させてもらったよ。特に司会と音楽の演出が素晴らしかった。それに、ビデオの放映した時のナレーション。あれは、まさに人生ドラマの域だったよ」

 「弊社の社長は、ホテル葬、偲ぶ会、お別れ会など、ホテル葬の第一人者で、テレビで日本一の葬儀司会者と紹介されていますし、自分ですべてのシナリオを創作し、キャスティングまでの総合プロデュースを担当しています」

 「いやあ、大したものだ。これは、確実に流行するだろうし、歓迎されるだろう。**さんの社長も、きっと君達に担当してもらったことを喜ばれ、満足されていると思うよ」

 「手を止めて悪いが、もうひとつだけ教えて欲しい。こんな形式の社葬を何処かで出来る業者やホテルがあるのかね?」

 「絶対に無理だと思います。参列されたご体験から、全国から出張要望がございますし、地方のホテルさんも、お客様のご要望で、仕方なく弊社に依頼されて来られるケースも増えています」

 「そうだろうな、こんな社葬があるなんて驚嘆したよ。私は東京からだが、もしもの時は君達を指名するからね」

 そんなお言葉をくださってエレベーターに乗られたが、扉が閉まった時、彼女の「ヤッター」という仕種が可愛かった。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
携帯で下のQRコードをスキャンするか
 または
携帯に下のURLを直接入力します。
URL http://m.hitorigoto.net