2002-05-20

託された「独り言」   NO 80

弊社のメモリアルサービス事業部の事務所には、小さな部屋だが、私の「隠れ家」としているところがある。
 
ナレーションの推敲や、この独り言の原稿を発信するのもここ。
 
今日、私の担当する葬儀が終わり事務所に帰った時、来社されておられた近所のおばさん?と、ばったり出会ってしまった。
 
このお方のお話し好きは有名で(ごめんなさい)、時には長時間に及ぶ経験から、事務所内のスタッフのことも考慮して隠れ家に案内した。
 
彼女が来社された目的は、私に話したいということで、いつもと違う雰囲気を感じながら聞き始めた。
 
「あなた、インターネットで<コラムみたいなもの>を、毎日発信されているでしょ?」
 
そのお言葉を耳にした時、何か逆鱗に触れることでも書いてしまったのかと、緊張が走る。
 
しかし、お叱りを受けるお話しではなく、上記とは全く逆の「懇願」されるということが分かり、彼女の切望という問題提起をこの独り言で書いている訳である。
 
「ちょっと、聞いてくれる? 私、昨日、友人が亡くなって葬儀に行って来たの。そこで衝撃を受けてしまって、腹が立って耐えられないの。この怒りをあなたなら理解されると思ってやって来たの」
 
彼女が立腹されたことは、我々葬儀社への怒り。拝聴していて<まだ、そんなレベルの葬儀社さんが存在していたのか>と、私自身も腹が立ってきた。
 
彼女に叱られるかも知れないので、彼女の年齢は50歳前後ということにいたしますが、
亡くなられた方は、高校生時代の同級生。3ヶ月ぐらい前から<電話がないな>と思っていたら突然の訃報。身体の不調から検査入院をされ、そのまま入院。

たった2ヶ月半の苦しい闘病で悲劇の日を迎えるという「ガン」の典型的なケースだったそうだ。
 ご立腹の問題となったのは、ご出棺前のお別れ。お柩の蓋を開けてご遺族やご親戚の方々がお別れされる時のことである。

「お別れご希望の方は、式場内へどうぞ」というアナウンスに促され、柩の中のご友人のお顔を見られた訳だが、余りにも変わり果てたお顔のイメージ。それは、彼女とのこれまでの素晴らしい思い出を、すべて打ち消してしまう程の衝撃となってしまったのである。
 
私 は、一般の方々のお別れ案内は、ご遺族の方々に確認し、そのご要望によってアナウンスを行なうことにしているが、特にお若い方のご逝去の場合、こんなこと につながることだけは避けたく、「思い出と、お元気なご生前のお姿のイメージだけで」と、お別れを辞退されるアドバイスをしているし、極めて当然のように お別れに入って来られる方々には、スタッフにガードを張らすようにしている。
 
「あんなに素敵で、私よりも一回りも若く見えていた美人の彼女が、あんなに・・・」
 友人としてのショックよりも、美人だった彼女のことを思いやると、腹が立ってくる。それがご本心だろう。
 
私が、今日、この会話を「独り言」に託すことによって、彼女が少しでも救われ、そんな配慮のない葬儀社さんが気付かれることになれば幸いであり、同業の立場として、そのご友人に心からお詫びの合掌をさせていただきます。
            ・・・・・・・・・合 掌
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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