2002-12-12

焼香順位     NO 281

もう時効になったので「独り言」として書いてみよう。

 ある公的な役職にあった方の葬儀が、地域の会館で行われた。大阪というところは代表者の焼香順位に「ウルサイ」方が多く、遺族だけではなく葬儀社も悩んでいる。
  (正直な話、これは全国共通のようだ)

 通夜に役所の方が、知事、市長、議員、各種団体役員など、公的な方々の順位をメモした下書きを持って来られた。

 彼は、あくまでも役所としての立場。それらの順位は、これまでの慣例という形式で決定されていた。

 さて、葬儀の当日、私は、清書されて与えられた焼香順位に基いて、約100名近い方々の芳名を読み上げ、ミスもなくご出棺となった。

 次の日の朝、弊社の事務所に電話があった。相手は上記の役所の方。昨日の葬儀の順位で一人の市会議員から区長にクレームがあり、司会担当の私に謝罪をして欲しいと言うのである。

 当時、私は、当番性のようなシガラミから、市のPTA協議会の役員をしており、区長との関係も深く、彼の立場がよく理解出来たが、この問題についての謝罪をする気持ちは一切なかった。

「文句があるなら議員が私のところへやって来るべきだ」

それが担当の方に申し上げたことで、区長をいよいよ苦悩させることになったが、彼も日頃の鬱憤があったようで、正直にそのまま伝えてくれた。

 ところで、そのクレームだが、役所が決めた市会議員の順位は選挙の得票順。そこだけ五十音順にすることも出来ず、これが慣例になっていたのである。

 発生していた問題。私は、それを通夜の時点で予測しており、思っていた通りの筋書きになっただけのこと。クレームをつけられた議員は、当時に議長をつとめられており、市会議員ではトップに呼ばれるべきだと問題にされた訳である。

 私は、通夜で、この部分の順位について喪主さんと話し合いを済ませていた。故人は、議長でない議員の後援会に属されており、市会議長であろうとも「トップにして欲しくない」「市会議長という紹介発言も割愛して欲しい」との、いわゆるお墨付きをいただいていた。

 故人と喪主さんの後ろ盾があれば戦うのが道理。そこで強気に返すことにしたのである。

 事件は、すぐに進展をみた。秘書から直接電話があり、議員に謝罪してくださいと懇願された。

「私 は、司会のプロ。与えられた順位についてミスなく進行しました。ご当家との確認も行っており、そのご意思に則って進めました。ミスをしていたら平身低頭謝 罪をいたします。しかし、区長や私に謝罪を求められるのは筋が通っていません。はっきり言います。私は、肩書きに謝罪する気持ちは毛頭ありません。議員と いう人柄に対して評価をさせていただきます。これ以上謝罪を求めるなら、文書でお出しください。堂々と文書で返します」

 続いて、「議員がおられるなら代わってください。直接話しますから」
 
 電話は、議員に代わることはなかった。それは、秘書の判断でそうしたのだろうが、数日後の何処かの葬儀で顔を会わせたその議員さん。私に近付いてくると次のように言われた。

「この前、わしの秘書が失礼なことをしてしまったようで申し訳ない。叱っておいたので許してやってくれたまへ」
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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