2003-06-11

深刻な現実    NO 455

過日、空港での出国検査が厳しいと書いたが、それが安全につながることなら大歓迎しなければならない。

テロに対する危機管理が世界的に騒がれている時代、何度も出入国されるビジネスマンには気の毒だが、我々庶民が出発するのに2時間前に手続きをするぐらい当たり前のことだろう。

 検査官のマスク姿が強烈に緊張を訴える。閑散とした待合室にもマスク姿が目立つ。

 我々夫婦は、人との接触を出来るだけ避けるため、早めにラウンジで待機することにしたが、ここでの1時間と少し、乗客の出入りは1人もなかった。

 ラウンジのスタッフと少しだけ話をしたが、東南アジア方面のフライトキャンセルが増え、便数が激減してこの様子だと言うが、その表情は悲壮感を感じてしまうほどだった。

 やがて出発の時刻。機内への案内が始まったが、搭乗者は30数人。14席あるビジネスクラスに座っているのは我々2人だけ。サービスを受けるのが何か気の毒で、食事を済ませると眠っている振りをしたが、気を利かせてくれたのか、すべての窓のブラインドを下ろしてくれた。

 さて、帰路の機長が楽しい人物だった。陽気なアメリカ人らしい人柄があふれ、機内の入り口で一人一人のチケットを確認しながら名前で呼んでくれる。「花子さ~ん、楽しかったですか?」
 
 そんな機長が操縦する飛行機が名古屋空港に着いた。完全防御姿の女性2人が待ち構え、横にいた警察官らしい人が「ゆっくりと1人ずつお通りください」と声を掛けている。

そこには、テレビのニュースで何度か見たビデオカメラのような体温計測器が置かれていた。

 やがて預けた荷物がコンベアから出て来る頃、館内放送があった。

 「今から麻薬犬が入ってきます。噛み付いたりしないのでご安心ください。決して触ったりしないでください」

 麻薬犬は中型犬で真っ黒。かわいい目をしていたが責務に従順なようで、帰国者の足元を嗅ぎ回っている。

 世の中に旅客機が登場した頃、ハイジャック、テロ、麻薬なんて考えられなかったこと。それが愚かな人間社会の変化でこんな厳しい検査をしなければならない時代。そこに何かの悪戯のようにSARSというとんでもないバイキンが出現した。

 肉体を蝕むバイキン。それに併行して社会に「心」のバイキンが蔓延してきていることが気掛かりだ。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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