2002-03-24

いい加減にしてください     後 編

「奥様は送りたい。ご親戚の皆様は送ってはいけない。そんな事件となっていますが。送ってはいけないという根拠はなんでしょうか?」

 そこから、つまらない慣習の戦いに貴重な時間を消費することになったが、反対派の意見は強硬の姿勢を崩さない。やがて、怒りが心頭してきた。

「そ れは皆さんの地での慣習です。昔、奥様が喪主の場合、貞節を表明する姿として、嫁がれて来た時の白無垢姿をされる風習の地がありました。でも、よくお考え 下さい。今、ご出棺というところで、再婚という言葉を発言されるということが、どんなに不謹慎なことかご理解されていますか。お棺の中におられるご主人様 は悲しんでおられないでしょうか。ここで、僭越ですがプロとして提案を申し上げます。このご決断に重要なことは、後悔という問題です。おそらく奥様は、送 られなかったら一生後悔されることになります。しかし、送られて、皆様から貞節観のない嫁だと非難されても、きっと堪えることが出来るでしょうし、その覚 悟もされておられる筈です。ここで結論を申し上げます。このご決断の権利は喪主である奥様にしかありません。奥様のご判断で決めてあげるべきです」

  そのとき、近くにおられた会葬者の中から数人が、「そうだ、その通りだ」というお言葉のエールを贈ってくださいました。そして、一人の年配の女性が「私で も送るよ。誰が何と言っても送る。妻が主人の最期を見届けなくてどうするの」と、奥様への応援団長的な発言をされたが、その後に続いた「でも、私の場合 じゃ、再婚の話題なんか出ないけどね」という、反対派への皮肉の言葉に、周りが一瞬、静まった。

 やがて、奥様は火葬場に向けて出発をされたが、その後のことは耳にしていない。 

 私が上記の行動に出た背景には、その時には言わなかったもう一つの思いがあった。もしも自分が霊柩車の中に眠っている立場だったらどうかということだ。送って欲しいと思うのが「情」ではないだろうか。

慣習に関する質問は多い。毎日、電話も掛かるし、友人の喫茶店で過ごすひとときにも聞かれる。

夫の代理で参列するとき、記帳する名前はどうするの?
参列する時に許されるアクセサリーは?
喪中に正月を迎えるのですが、おせち料理はどうするの?
祝儀と不祝儀で、お札の向きや裏表はどうするの?
火葬場からの帰りは、行きと違った道を通らなければならないのですね?
門徒は一膳飯はいらないのですか?

 様々なご質問を頂戴いたしますが、ご理解へのご参考になればとの思いを託し、このホームページ内に、そんなコーナーを構築しました。
慣習、しきたりだけではなく、仏事に関するすべてと言ったら過言ですが、便利帳としてご活用くだされば幸甚です。

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