2017-06-16

命の伝達  NO 6991

鼻の宿 染井 露天風呂様々な葬儀を担当したが、その中で忘れられない思い出があり、今日は「幸せ列車」で紹介されていた「10年前の独り言」から転載を

変化の裏側で  NO 1889   2007-06-15

葬儀の際に入られるお寺様の人数が激減傾向、それらは東京、大阪、名古屋など大都市だけではなく、想像もしなかった地方まで及んでいるようだ。

考えてみれば親戚の存在がある。核家族時代になり本家、分家という言葉が表面化することも少なくなり、「オジサンのお葬式、お寺さん2人だったよね」なんて会話が飛び出し、それが大都市での出来事なのに田舎の葬儀で既成事実として決定されてしまう。

今でも5名が最低という地方の地域も存在するが、葬儀そのものを全体的に考えれば、今、お寺様の人数だけではなく、全国的に参列者数が激減傾向にあると言えるだろう。

それらは親戚の人数にも見られるようで、遠方の親戚の人が夫婦で話し合い、「お前だけ行ってこい」というケースも確実に増えている。

研修会の中で信じられない出来事が紹介され、みんなが唖然、愕然としたケースがあった。

ある地方で70代前半の男性が亡くなられた。葬儀のご依頼を受け病院へ参上。悲嘆にくれられる奥様と共に自宅へ搬送、そしてご安置が済んだところで「喪主様は何方様が?」と確認したところから問題が生じた。

「喪主は、長男が務めますが、仕事の都合で明日の昼頃しか来られないのです」

伺ってみると、ご夫婦には2人の男の子供の存在があるが、どちらも東京に在住しているとのことで、葬儀の打ち合わせについては「お母さんが恥ずかしくないように、適当に進めておいて。費用は我々兄弟が持つから心配しないで」ということだった。

最近、こんなケースも少なくないが、やはり喪主の存在なくして進めるべきではなく、取り敢えず日程を決め、重要なことについてはご本人が来られてからということで進められた。

次の日の昼、喪主さん夫妻が到着され、「待ってくれていたの!」と感謝の言葉から打ち合わせが始まり、やがて細部に亘る決定が成されることになり、何とか間に合ってその日のお通夜となった。

2人の息子さん達は、それぞれが大企業の幹部職、びっくりするほどの数の弔電が届き、それらが祭壇前に供えられて導師のご読経と法話が済んだ。

お寺様が退出されると親戚の人達が控え室で「御斎」のひととき。式場には奥様が独りだけ座られて灯火の番をされているが、その姿が何かを訴えられるように寂しげ。<!?>と何か普通でないイメージを感じた。

やがて、その事情を知るところとなり、そこからその担当者が怒り心頭で隠密行動に出ることになった。

「ずっとねえ、病室でねえ『孫が来ないなあ』と嘆いていたのです」

そう言えば孫らしき姿が見えなかった。奥様に確認してみると4人の孫さん達が居るとのことだが、どうも「お婆ちゃん、お爺ちゃん」と語り掛けるようなそれらしき姿が見えなかった。

「今日は、お孫さん達は来ていないのですね。明日に来るのですね?」と言ったと同時に号泣されたお婆ちゃん、「明日も来ないと息子達が言うの」と肩をゆすっているお姿があまりにも気の毒だった。

孫さん達の年齢を予想すると中学生から大学生ということになるが、受験や試験の時期でもないし、疑問よりも4人とも来ないという事実に不思議な思いがする。そこで故人の弟さんという方に内緒でご相談、「何とかお力添えを」と懇願申し上げた。

「孫が来ない!信じられん。何を考えておる。よし、わしが説教をしてやる」と行動開始。5分もしない内にお婆ちゃんへの報告、「午前中に到着することになった」と笑顔で報告。それを聞かれたお婆ちゃん、如何にも嬉しそうにご遺影に向かって手を合わされご報告を。

何でこんなことになったのかと抱いた疑問、葬儀が終わってからの「御斎」のひとときでその答えを知ることになった。献杯を担当された上述の人物が、孫に向かって「お前達ももう大人かもしれないが、子供であり、孫であることに変わりはない。爺ちゃんも喜んでいるだろう」と挨拶をされた。

故郷で父が死んだ。葬儀に行かなければならない。仕事で重責を担う立場でその間の処理に頭を悩ませ、その奥さんは地域のゴミ当番のいう問題と愛犬の存在に苦慮をされ、子供達に留守を任せるという発想で進められていたという。

「僕達、来れてよかったよ。来なかったら、ずっと後悔することになったと思う」

そんな会話をする孫達の嬉しそうな笑顔が、お婆ちゃんの悲しみを慰める最上のものだったような気がした。

今日の写真は過去に夫婦で利用した熱海「花の宿染井」の露天風呂を。
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