2020-02-09

文字伝達と言葉伝達の差違 NO 8706

スーパー北斗友人が高血圧が判明して血圧降下剤の服用を始めた。私と同年代で私が大病を患う前日に銭湯で会っていた人物なので、心疾患や脳疾患の恐ろしさについて語り合ったが、昨日に行った医院で前から指摘されていた「不整脈」が酷くなっている事実を知ったのでびっくりした。

尊敬していた方が不整脈から心筋梗塞で急逝されたことがあるので気を付けなければならないが、この数日の冷え込みの厳しさが半端じゃなく、行き倒れにならないように気を付けて歩いている。

さて、蕎麦屋さんに入って食事をして、支払いにレジに行くと置かれていたカレンダーに目が留まった。「恋という字は下に心があるけれど、愛という文字は心が中央にある」というようなことが書かれてあり、商店街を歩きながらその作者が考えられたプロセスを想像していた。

葬儀の司会という仕事に長年携わり、様々な文字を連ねて言葉を紡いだ歴史があるが、司会者が言葉を発して耳にされた方々がどのように感じられるかと言うことは、どんな言葉や文字を思い浮かばれたかということになるので簡単ではない。

私の机に多くの資料が残っている。この「独り言」を訪問下さる司会者の皆さんに少しでも伝
えることが出来たらと思っているが、ふと取り出したノートの半ページに次のようなことが書かれてあった。

「辛さは悲しみに似ているけれど実は違うもの。なぜなら辛さは自身の欲望から作られたものだから、自分の心のありようで軽くすることが出来る」「しかし、大切な人を喪った悲しみは避けられないことであり、その時、初めて人生に於ける一番の辛い試練が亡くなるという悲しみと知ることになる」「あなた様は私たちが人生と呼ぶ曲がりくねった道程を歩んで来られた。人生最期の瞬間に感じ経験されることは新しい命の種である遠くの哲学が説いている」

上述の文は何処かで目にしたものをしたためたものかも知れないが、私の司会の中で「故人への呼び掛けバージョン」「参列者への説教バージョン」などの「問い掛け型形式の一部であることは確かで、無宗教形式の中で「司会者」ではなく「司式者」として行っていた物の一部である。

上手く喋る、上手く伝えるなんて初歩的なレベルではなく、言葉で会場空間を一気に神変させる高度なアナウンス力が求められ、参列者の心の扉を開けることが出来ればとやっていたことを憶えている。

次のページを開けたら、大病を患う前に担当していた葬儀の通夜バージョンの原稿が載っていた。深いご仏縁に結ばれる知人のお母様のお通夜のもので、お預かりした十数枚の思い出の写真を映像編集した物を流す際のものだった。

「あちこちのお家に御雛さんが飾られ、桃の節句が行われている頃、故人はご家族の皆様から手厚い看護を受けられていました。過ぎゆく冬の厳しさとやって来る春の穏やかさが鬩ぎ合う早春は、何時の季節にもまして一日一日を愛おしい思いで迎えますが、早春の季節に逝かれた人の思い出は、一入心深いものがございます」
「しみじみと人の命の春寒き」そんな俳句を思い浮かべる季節、故人はこの季節を何度迎えられてすごされたのでしょうか?」
「明治時代にこの世に生を享けられ、大正から昭和の初めに青春時代を過ごされ、戦前、戦中、戦後という激動昭和の混乱期を乗り越えられ。妻として。お母様とされて見事にご家庭を守り築かれたご一生。時に喜びの花を咲かせ、憂いの雨に打たれて織りなして来られた人生模様には、筆舌に堪えないご苦労もあられたと拝察申上げます。
「あなた様はある理由のためにこの世に生まれ、ある理由のためにこの世を出立された。無垢で欠けることのない美しい価値ある人として生まれ、時を過ごされ、与えられた時が過ぎたのかも知れませんが、ここに送る皆様ができる限りのことをされ、あなたさがされて来られた全てのこと、触れた全ての命の元に、その一部を残して逝かれることを心に刻んでおられます」
「辛くて厳しかった時代の思いではセピア調に見え、明るい過去の思いではカラーで見えると言われていますが。今、皆様が思い出されておられる光景はきっと御祭壇に飾られたご遺影のようにカラーの世界であられることと存じます」
「愛し、愛され、働き生きてこられ、子供。孫、曾孫という人生に於ける立派な命の伝承の責務も果たされた故人、あなた様が私たちに下さったたくさんの思い出は、今はもう『形見』となってしまいましたが、立派な人生を歩まれた方には『過去』『現在』『未来』という言葉が存在し、これからも皆様のお心の中で生き続けます。
ご家族の皆様は『有り難う』『お疲れ様』との思いを『お念仏に込められて』感謝の合唱で送りゆかれます。どうぞ安らかに、そして現世の皆様の行く末をお見守り下さいますようお念じ申上げます」

耳で聞くのと文字から感じるギャップは否めないが、その差を少なくする「語り調」が重要なのであり、多くの人達に説いたり伝授した歴史もある。

今日の写真は函館駅で撮影した「特急スーパー北斗」を。今日のニュースで苫小牧駅で車掌さんの一人が置いて行かれ、タクシーで10キロ先まで追い掛けてニュースがあったが、こんな出来事も起きるのだとびっくりした。
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