2004-05-03
形式変更 NO 782
お寺で行われていた葬儀、朝の打ち合わせに行った担当者から緊急情報を伝える電話があった。
30人ぐらいの親戚さんと、深い関係者だけで進められることになっていた葬儀だが、前日の通夜に弔問された方から広がり、家族葬的な予定から数百人という規模に膨れ上がってしまったというのである。
受付机の台数や会葬者の休憩所を急遽セッティングし、前日のお寺様との打ち合わせで決まっていた式次第も大きく変更。ご出棺前の「お別れの時間」が短くなってしまうことだけは避けたく、開式の時間を10分繰り上げて行ったそうだ。
弔問者や会葬者の人数把握は難しく、誰にも知らさないという形式で進んでいても「秘密」ということは難しく変更を余儀なくされることも少なくないが、現実 に正装された参列者の姿を目にされて「当家は、家族葬で」とは返せないもの。それは、「故人の遺志」さえも飛び越えてしまう場合もある。
一方で、上述とは逆のケースも発生する。「1000人ぐらいの会葬が」と予想され、その対応で式次第を組み上げていると、葬儀の当日にやって来られたのは400人というようなことがある。
「現在の会葬者は?」 外側にいる担当者からインカムを通じ3分刻みで参列者数の報告が入ってくるが、開式後10分以内に決断しなければならない問題がある。
お寺様と打ち合わせをしていたのは1000人想定の式次第。1時間半や2時間という形式をそのまま進めれば早く終わってしまい、焼香用具の台数を減らすぐらいでは調整不可能となる。
そんなところから、様々なシナリオを用意して臨むことも大切。皆さんに告知されたご出棺の時間を早めることは大問題。間に合うと思って式場に到着したら、ご出棺された後だったら大問題。
そこでJRではないが、ご出棺の時間を出来るだけ合わせるように調整している。
こんな時に活用されるのが音楽やナレーションということだが、会葬者数に合わせて5種類程度のバージョンを用意する場合もある。
しかし、こんなケースのナレーションは、単に美辞麗句のオンパレードであってはならないもの。「命」「宗教」などをコンセプトに、意義重視につとめなければならないだろう。
会葬者の中には義理的立場の方も存在される筈だが、そんな方にも「やがてこの日が訪れる」ということを感じていただくことも葬儀の意義。それは、何より故人が教えてくださることでもある。
参列者に待ち時間を短く感じさせることもサービスのひとつ。そんな場合、誰もが耳を傾けてくださるのは「故人」と「遺族」に直接つながること。だから「取材」が重要となってくるわけだ。
1時間の葬儀、一般的に45分で終了し、謝辞の最中にご出棺の準備を進め、そこから「お柩」が開けられ「お別れ」となるが、大半の葬儀のお別れは、たった「5分」というのが現状のようだ。
弊社は、この部分の時間余裕を重視している。靴や草履の履き替えだけでも数分必要。外の参列者がお別れに入られたらもっと時間を要してしまう。
1時間とは60分。人生の終焉儀式の中で、その内の数分を「履き間違い」のテンヤワンヤに使ってしまうことはもったいないこと。それらは、現在の葬儀が1時間で行われている中に秘められた大問題かも知れない。