2002-04-01

人生は「交響曲」

人は誰しも喧騒と都塵を離脱し、心身の癒しを求めるために自然の中に身を委ねたくなるもの。そして、邪魔者のない環境空間を得ようとする時、自分だけの音楽への要望が高まります。
 
私は音楽が好きで、様々なコンサートに足を運びますが、本物の音楽との出会いは、朋友との出会いのような瞬間を感じます。
 
オリジナルCD「慈曲」の制作監修に携わった時、作曲者とのお話に力説したことが懐かしく思い出されます。
 
唱歌、童謡には万感の思いが胸に込み上げてくるものがある。それは郷愁の情が奏でられているから。

人は自然の世界に接すると心が和む。山、海、新緑、花鳥風月、それらには日本の風情と誤りのない時間の流れが感じられる。これこそ、ノスタルジア。
 
また、唱歌、童謡の世界には、虚飾を廃した純粋な音楽の原点があり、これらのノスタルジアは、素朴で不思議なロマンを感じさせてくれるものだ。

人生にあって、よき友人との出会い、感動を誘う音楽との出会いは、人生を更に豊かにしてくれ、不幸でないようにしてくれる。

一昨日、トランペットのアレクセイ・トカレフさんと、ピアニストの井口真由子さんのコンサートに行き、久し振りに本物の音楽を耳にしてきた。
 
井口さんのピアノが素晴らしく、全身全霊を込めて演奏をされるとき、ピアノがドレスアップしたように光り輝き、幸せそうな表情を見せてくれるような気がした。

お二人は、近日中に東京のホテルオークラさんでも演奏されるそうですが、今回のような偶然の機会に恵まれて素晴らしいひと時を過ごさせていただきました。
 
夜の帳が降り、窓ガラスが冷たくなる。そんな時は肘掛椅子にでもくつろぎながら、上質な音楽を静かに聴きたいもの。
 
穏やかな時の流れ、優雅な空間の誘い。いつしか心から安心している自分に気付く。そんな上質な時間がゆっくりと過ぎてゆく時、音楽が幸せの使者のように思える時でもある。
 
葬儀でのナレーションのための取材を担当するとき、故人との思い出話しを語ってくださることがありますが、その際に愛唱されていた音楽の話に進展することが少なくありません。
 
暗 い過去はセピア調に見え、明るい過去の思い出はカラーで見えるという、大好きな言葉がありますが、心を和ませてくれた音楽、喜びに花を咲かせ、憂いの雨に 打たれて織り成して来られた人生模様にあって、その時、その時に出会った音楽は、過ぎ去って行った大切な人生の一瞬一瞬を思い出させてくれます。
 
人生は「交響曲」である。これは、私の人生哲学である。

時にはピアノに、時にはオーボエ、ホルン、ティンパニーに、ベースになることも必要だろう。終焉のとき、自身が奏でられるオーケストラのスコア完成が成されていた時、残された人々の心に響きながら生きることとなり、必ず音域が広がり伝わって行くだろう。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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