2003-06-28
絵になりますので? NO 470
ホテル社葬に使用するビデオが完成した。深夜にその映像を見ながらナレーションのシナリオ創作を行う。
今回の社葬の特徴は、7名様の弔辞を拝受されること。そこで参列者が退屈をされない工夫が必要で、プロデューサーとしていくつかの仕掛けを考慮した。
それでも時間と環境という限度がある。これだけは誰が考えても無理なこと。失礼だが、きっとオヤスミになる方がおられると覚悟している。
事務所に行くとスタッフ達が慌しく動いている。みんなそれぞれがミスを発生させないような思いで一致し、チェック作業に取り組んでいる。
マンネリの中で発生するミスは取り返しのつかないことが多いもの。そんなことにならないために緊張が重要。そんな本番までのプロセスでスタッフが育つ。
シナリオが完成すれば音楽、音響、照明の指示を打ち込まなければならない。秒単位で進行するのにタイミングのズレは命取り。それぞれの世界のプロ達が、それぞれの最大のパワーを発揮できるようなシナリオ構成でありたいもの。
それには台本創作にすべての責任があることになる。それだけに私の責務が重く、スタッフ達への言葉もきつくなる。
しかし、私自身が司会を担当するのだからやり易いのは事実。自分の喋り易い言葉で原稿創作を行い、後はサブの女性司会者をどのように活用するかということになるが、彼女の口調とイメージは何百回と共に仕事したことで誰よりも知っている。
一流と呼ばれるブライダル司会者でも出せない葬送のイメージトーク。それが彼女には気品として生きてくるのだから不思議な魅力。
ただ、彼女にも困る問題がある。中継と収録を担当する映像のプロカメラマン。彼のカメラが彼女を追いかけてしまうから。それも何度もアップで押さえている。
そんな彼に苦言を発したことがあるが、彼は、次のように答えて私を困らせた。
「分かっているのですが、何か知らない内にカメラが向いてしまっているのです。何と言うのでしょうか、『絵』になる被写体なのですね。ハイ」
過日に書いた九州での社葬。フェリーの船上で食事中、彼が突然彼女に言い出したことを思い出した。
「あっ、もう間もなく明石海峡大橋の下を通過します。ライトアップされた橋を撮りたいのです。彼女、悪いけど一緒に来てください。モデルになってください」
そんな出来事が懐かしいが、実は、今回に担当申し上げる故人は、明石海峡大橋をはじめとする本四架橋や、新幹線、高速道路、モノレールなどに携わる人生を謳歌されたお方。
一昨日、昨日と1300キロも走行したが、きっと故人が関係された道路や橋を走行した筈。そんな「えにし」を思いながらシナリオ創作に入ろう。