2005-11-04
死ぬまで勉強! NO 1322
ご家族から拝聴する故人の情報、それは、ご家族それぞれの思いと共に、葬儀のプロデュースにあって不可欠なもの。遠慮がちで「さりげない」一言の中に重要 なキーワードが秘められていることもあり、それらを感知するアンテナを高くし「さりげなく」背景を伺うことも大切な仕事。
一方で、司会者やスタッフが気配りしなければならないことに参列者の存在がある。宗教者がおられたら特別な配慮が必要だし、制服姿の方々があればご家族に「ご関係は?」という確認も重要となる。
この2点だけでも式次第を大きく変更させることもあり、瞬時にシナリオを構成する技術を学んでおきたいものである。
上述したことが「どういうこと?」とご理解できない司会者さんは残念だが失格、まだまだプロの域が遠いと考えて欲しいもの。
また、開式前にご遺族にアドバイスを行い、弔問者、会葬者をご確認いただくことも大切。ご当家にとって予想外の要人が参列されているケースもあり、そこで両者がプラスになるような配慮もサービスの重要テーマのひとつである。
司会者の側に専属のアシスタントを待機させておくことも基本、気付いたことをメモに託して喪主さんに確認を得る行動、それで「よく知らせてくれました。失礼がなかって助かりました」と感謝されたこともいっぱいある。
開式したら後は流れるだけと考えていたら大きな間違い、式の進行の中で次第を急変させる瞬時の行動力もプロの仕事だと考えている。
参列者全員が着席可能な葬祭式場は別として、ご自宅、地域の会館、お寺での葬儀では、外側におられる参列者の中を回ることも大切。そこで耳にする会話にご 遺族がご存知でなかった素晴らしい故人の一面の情報が得られることもあり、それらが進行のコメントの中に組み入れられると、不幸の中で「不幸でないひとと き」が生まれることも可能。
参列者に対するお手拭や湯茶のサービス、接待担当スタッフからそんな情報が寄せられてくれば素晴らしい葬儀社、こんなチームワークが構築できればプロの葬儀社となるだろう。
全国から「司会の勉強がしたい」と多くの司会者さん達が来社されるし、サービスレベルをアップさせたいと経営者の方も来られるが、こんな話を出すと皆さんが傷心に駆られてしまい、戻られてから頂戴する礼状に「カルチャーショック」という文字がしたためられるのだろう。
ある火葬場からの帰路の車中、ご主人を亡くされた奥様が助手席におられ、「こんな悲しいこと、いつか薄らぐのかしら?」と質問があった。
それに答えた私の言葉は冷たいもの。「絶対に薄らぎません。いっぱい思ってあげて悲しんでください。それがあなたの功徳であり、ご主人の最高の供養なのです」
悲しみは「日にち薬」という考えもあるが、そんな簡単ものではないし、我々葬儀社風情が対応するには限度があるもの。それは、カウンセリングやグリーフワークを専門的に研鑽しても「葬儀社」という立場で解決が難しいとも言えるだろう。
今、弊社が加盟する日本トータライフ協会のコラム「有為転変」で、プロフェッショナルをテーマとして書かれた「大法輪」のコラムが転載されているが、メンバー達はそれで学んだ多くのことがあった。
厳粛な葬儀の場、そこに携わる人達、祭壇に向かって一礼をする「後ろ姿」にプロの度合いが表れるもの。司会者なら発言するまでに「普通じゃない」と思わせ るパワーを発揮したいもの。プロとは無言でその存在感を感じさせる「域」の人達の呼称、そこには「粋」という誇りもあるのでは?