2002-06-05
テレビ出演の裏側で NO 96
東京のテレビ局からの依頼で、1時間の生放送に何回か出演するということがあった。その番組のメイン司会者が著名なキャスターで、葬儀の話題を取り上げる時、必ず私を招いてくれた。
大阪からの交通費、宿泊費、ハイヤー送迎まで含めると、テレビ局側が負担される金額も大きいし、いつも「なぜ、東京の葬儀屋さんを呼ばないのだろうか?」との疑問を抱いていた。
誤解を招いてはいけないので、頂戴した出演料にも触れるが、私は芸能人ではなく一般(彼らの世界では有り難くも<文化人>と呼ばれていた)扱いで、東京、大阪間の新幹線のグリーン車往復料金程度であった。
出演料は、必ず10パーセントの源泉税が差し引かれ、年末を迎える頃になると、年度の出演料源泉税の明細が送られてきていた。
さて、上記の疑問に対する答だが、食事をしながら打ち合わせを行なっている時、ふと、担当プロデューサーから飛び出した雑談で知るところとなった。
それによると、ある番組で、視聴者からの電話による質問を承るコーナーがあり、「これは面白い」という内容の質問を司会者に渡し、ゲストに迎えた葬儀屋さ んに応えていただく企画があったそうだ。しかし、ある質問に対して答える事が出来ず、その瞬間からクレームの電話が鳴りっ放しになってしまい、司会者を含 む番組スタッフ達がパニックに陥ってしまったそうである。
「あなたは安心です。おそらく、難しくて答えられない質問がきても、さらりと交わすことが出来る筈です。その余裕が私たちにとって有り難い存在なのです」
変に持ち上げた「煽て」の言葉でないかと思った時、それを察したキャスターが慌ててフォローしてくれたが、生放送の面白くて恐ろしい舞台裏を学ぶことにはなった。
多くの芸能人の皆さんとご一緒したが、自分だけの「受け」を売り物にされる「おふざけタイプ」の方が大変で、「今日、全国でどれだけの悲しみの葬儀が行わ れ、また、今晩、どれだけのお通夜が行なわれるかご存じですか?」と発言してしまい、番組が、一瞬、お通夜のように固まってしまった苦い経験も懐かしい。
一方で、あるクイズの特別番組のゲストとして招かれた時、「それだけは許して」と懇願したが、どうにもならず、会場に設けられた階段の上のゲートから、著 名な俳優さん、歌手さんに続いて「3人目のゲストです」と紹介され、階段を下りて行った登場シーンだけは羞恥と不覚の極みで、思い出したくない歴史として 焼きついている。
テレビ番組の生放送の司会者能力は、打ち合わせの時にすぐに分かるもので、視聴者のことを考慮して「それは止められた方が」というアドバイスに対して、「お話ししてください。ご協力ください。お願いしますよ」というタイプは二流。
一流と呼ばれる方は、「ごもっともです。なるほど。おっしゃる通りです」と言いながら、本番になったら持ち出してくる方。
そんなところから、これらに対する「交わし方」をテクニックとして備えておかなければ、ゲスト出演は、致命的な結末を迎えることになるだろう。