2012-12-09

数珠と香を手に  NO 3123


 日付が変わったのでおかしいが、昨日の大きな地震、「もの凄く揺れたよ」と孫からの電話で恐怖の体験談を聞かされたがファミリーも家も被害がなかったようで安堵。大きな地震が発生しないように手を合わす。

 猛烈な冷え込み。外を歩いているだけで凍りつくような寒さ。こんな時期はご不幸が多く、何軒もお葬式が重なっている。

 昨日、東京の青山葬儀所で俳優の「森光子」さんの本葬儀が執り行われていた。今夜に参列した女性、そして明日のお通夜に参列しなければならない女性のお二方は奇しくも「森光子」さんのイメージを感じる品のある素敵なお方だった。

 どちらも同じような年齢だが、ご生前に何かとご仏縁があっただけに寂しさも一入。手にした数珠を思わず握り締める厳寒の中で、思い出だけが温かいお別れなんて司会のフレーズがあったが、ご読経を耳にしながらそんな昔のひとこまを思い出していた。

 あるお寺の先代坊守さんのご逝去も知った。先代ご住職は仏教会の要職にあられた関係から特別なご仏縁があったが、私が「葬儀屋七万歩才のあの世の旅」を書くきっかけを与えてくださったお方でもあった。

 現役の頃、ご導師、葬儀委員長、喪主さんを乗せた車を運転して火葬場まで随行するのが私の日常だったが、瓜破斎場からの帰路の車内で喪主さんに説かれた「あの世」の話が興味深く、それから十王経について紐解くことになった歴史がある。

 火葬場までの往復の車内で伺った様々なお話はこれまで人生にあって何より貴重な体験でもあり、全国に存在する葬儀司会者と異なる世界を自負していたのはそんな背景があったからである。

 クラウン3台、センチュリー2台、その後にフルサイズのキャデラックと変遷があるが、随行をスタッフに任せるようになるまで7000回以上の体験があるのだから有り難いことだと感謝している。

  全国の業界、司会者団体、宗教関係、教育団体、異業種団体、女性会、ホテル業界、女将さんの会などへの様々な講演活動の歴史もあるが、前述の車内会話から 学んだことがいっぱいあったことも事実で、旅で宿泊した旅館やホテルでの新発見や究極のホスピタリティ・サービスなどは受講者の多くから驚嘆された世界で もあった。

 数年前に観光バスの運転手の現役だった知人がいるが、彼が温泉旅館にお客さんを運んで行くと、出来た旅館では客室を与えてく れ、食事も宿泊客並みのものを用意してくれたところもあった一方で、布団部屋みたいなところを用意され、食事も自分達で外食に行ったところもあったそう だ。

 そんな口コミは恐ろしいもの。良いところも悪いところもどんどん拡がってしまうし、温泉旅館の経営者は最寄り駅から玄関まで送迎し てくれるタクシーの運転手さんへの待遇を重視するべきで、そんな具体的なシナリオの提案を女将さんに伝えたら、次の日から早速実行され、一ヶ月も経たない 内に予想もしなかった好評を博したと感謝の手紙を頂戴した出来事もあった。

 前述の宗教者は、お酒をこよなく愛されておられ、何度かお気 に入りという料理屋さんにご一緒したが、いつも「粋」な飲み方と楽しくて役に立つ話題が多く、板前さんや仲居さん達に特別に歓迎されている光景が居心地が よく、「粋な酒席」とはこうあるべきと学んだことにも感謝している。

 そんなお気に入りだった料理屋さんも、数日前に前を通ると更地になってしまっていたので寂しく思った。世の中は常に変化している。仏教のキーワードとして知られる「所行無常」の言葉が身に染む師走のひとときだった。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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