2018-11-29

NO 8392 短編小説 あの頃 ㉓

綺麗だったホールバブル崩壊になった社会の経済が混乱している。多くのゴルフ場が完成を迎えないと言う入会者にとって最悪のケースも出て来ていたが、営業しているゴルフ場が破綻して閉鎖となっているところも増え、人件費の未払から営業がT不可能という深刻な問題も少なくなく、大きな社会問題として浮上して来ていた。

入会者が「預託金」の返還を求めて訴訟を起こしている件数も多いし、建設を担当した会社が支払いを求める裁判も話題になっていた。

グループ企業の連鎖倒産は理解出来るが、18ほるーのゴルフ場が経営破綻と言う不思議なことも起きていた。これについてはドラちゃんの店で会った会計士が解説してくれていたので納得していた。

会計士は次のように言っていた。

「100億の建設費で100億の募集金額で回転して行く筈なのだが、完成したゴルフ場を担保に新たにゴルフ場を開設する欲望に落とし穴があって、入会者が被害者となる訳だ」

オープンを迎えて来場者の落とす売り上げで健全な営業が可能なのし、借入額が大きいと金利負担が大変で、返済に行き詰まると担保物件が問題に及ぶ図式だが、当時の金利は1年物の定期預金が8%だったので、借入金利も大変だったことは確かだろう。

何処のゴルフ場も来場者が激減していたし、会員権相場も一気に暴落、経営観点からリストラや料金ダウンもエスカレートの一方で、ゴルフ業界は予想もしなかった厳しい冬の時代に陥ったが、水野のゴルフ場は来場者数の増加と共に法的契約のロイヤリティーから高額な利益を生み出し、納税額からも優良法人として認められていた。

ロビーの壁に賞状が掲示されている。それは地元を管轄する警察署から授与されたもので、飲酒運転撲滅運動に協力をしている功績に対するものである。

帰路の運転を担当する人物が飲酒して事故が起きればゴルフ場の責任も問われる。そこでチェックインのフロントで運転の有無を申告しているシステムで、運転する人が飲まなかった場合には精算時に1000円の割引が受けられるところから好評である。

ゴルフ銀座と称されている地の最寄りインターチェンジから繋がる幹線道路ではn時折に飲酒検問が実施されており、あるゴルフ場ではその事実を把握すると館内放送で「安全運転でお帰りください」と伝えるそうで、メンバー達はそれが検問の告知だと知れ渡っているそうだ。

水野のゴルフ場には日本でここだけという存在がある。それは支配人とキャディーマスターが研修会で関西に訪れた際に食べた物で、それが気に入って2ヵ月前にそのコーナーを設けたというものだった。

信じられないだろうが、それはお好み焼きと焼きそばが出来る鉄板のあるっテーブルを2台セッティングし、来場者が自分達で焼くことも出来るので興味が広がり、今では大人気となっている。

レストラン部門を統括する和食の専門家で、関西風の出汁も好評だが、お好み焼きの粉を溶く場合に出汁を入れているところから本格的で、接待にゴルフで来られた時に特に重宝されている。

ソースが熱い鉄板で焦げる香りが食欲につながると言われているが、レストランではフレンチ風の洋食や和食のメニューがあることから香りが漂うことを避け、少し大き目の換気扇を設置して対応している。

関西で「お好み焼き」や「たこ焼き」を食べると自分で焼いてみたくなるそうで、鍋奉行ならぬ鉄板奉行の活躍する光景が毎日のように見られている。

ハーフを終えて昼食時の休憩時間だが、多くの来場客を迎えるところでは2時間を超す所もあるが、ここは1時間と定めており、1日に受け付ける組数も決められている。

多くのゴルフ場がリストラを始めている、そんなところから水野のゴルフ場へ転職の問い合わせも増えているが、面接での人柄を重視し、支配人、副支配人、キャディーマスター、料理長の4人が揃って対応している。

しかし人柄本位であっても物理的な事情を無視する訳には行かず、通勤時間を車で1時間以内と定めている。

若いキャディーさんの中にはプロを目指している人が数人おり、その内の一人が次回のプロテストでクリアするのではと期待されており、クラブとしても時間的な余裕を与えて練習時間を充実するような体制で応援している。 続く
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