2018-11-16

NO 8380 短編小説 あの頃 ㉑

素晴らしかったレイアウト その事実を知って練習方法を変更し、急激に上達した人物がいる。もうシニアの年代になっていたが「こんなに酷かったのか!」と衝撃を受け、レッスンプロの指導を受けて半年後にクラブのシニアチャンピョンになったのだから凄いが、還暦を前に「ハンデ6」を維持するために、ジムに通って筋力トレーニングもやっているそうだ。

副支配人となって水野が発案したアイデアから多くの来場があるようになった倶楽部だが、水野は自分のクラブのメンバー達とラウンドし、様々な声を聞きながら問題があれば是正するようにしていた。

そんな中で問題が浮上したのがコース途中にある小屋のメニューで、寒い時期に身体を温めると人気がある「陶々酒」を、飲酒運転の危険性があるとメニューから外された。

水野が興味を抱いたメニューがあった。それは「スタミナドリンク」で、市販されている栄養剤と思って小屋の女性スタッフに伝えたら、彼女は「オロナミンC」と「ヤクルト」をブレンドして出してくれた。

夏の暑い時期の「かき氷」は人気があるが、前の組が詰まっている場合などには問題ないが、後続組を待たせてしまう問題があるので器の大きさや量の改善も打ち出した。

その話し合いをしていた時、キャディーさんの一人から提案されたのが来場者への飲料水のプレゼントで、カートに4本分が納まるボックスを準備、蓋の上に名前を記入可能なペンの用意も進められた。

支配人の発想から設けられた目安箱も役立っている。ある日の書き込みにびっくりし、数人で試してみたらその通りで、すぐに改善されることになった。その日は天候が悪くて来場者が少なく、昼食時の休憩時間が短く、最も早いメニューと言うことで4人がカレーライスを食べたそうだが、3ホール目頃から4人揃って酷い「胸やけ」に困ったとあったからで、体験した関係者が厨房のスタッフに確認したら、油肉が多過ぎたことが分かり、少なくして味付けを変えたら「胸やけ」の兆候を訴える人が皆無となった。

事務所のスタッフが発案した企画も好評だ。それはメンバーの誕生月に来場されたらお祝いのサービスを行うというもので、小さくて可愛いケーキを手配することになり、全スタッフに誕生月で来場しているメンバーの情報を伝え、「おめでとうございます」と声を掛けることになっている。

近くに3ヵ月前にオープンしたゴルフ場がある。そこは若い女性キャディーさんを揃えるために寮設備を設け、「キャディーではなくアシスタントと呼んでください」と打ち出して話題を呼んでいた。

面白いゴルフ場があるとメンバーから聞いて行ったこともあるが、そこはコースのバンカーの砂がピンクやブルーに着色されていたので驚いたが、桜の時期の行ったことから、桜の木で囲まれている1番ホールのグリーン上でボールをマークしたら散った桜の花びらで分からなくなることで、それは体験しなかったら気付かなかったことだった。

ゴルフ場にはドレスコードで常識となっているのが上着の着用で、暑い時期は手にしても構わないことにしているコースが多かったが、水野のいるゴルフ場では着用を義務付けていた。

暑い時期に男性が半ズボンスタイルを見掛けることもあるが、その場合にはロングソックスを着用するのが常識で、スニーカーで来場することもマナー違反となっていた。

レストランのウェートレスを担当している女性スタッフから提案されたことを具現化したら、メンバーだけではなくビジターからも好評を博していることもある。彼女の実家が植木に関する仕事を営んでおり、お父さんが業界でも知られる職能知られており、テレビ出演をしたこともある人物だった。

「食事の時に父から教えて貰ったことがあるのです・それはクイズみたいなニュアンスで、解答を教えて貰って印象に残っているのです」

彼女のお父さんの質問は「春の沈丁花は3里香、秋の金木犀は9里香」という格言の意味だが、それはそれだけ香りが漂い伝わるというもので、4ホールあるパー3のグリーン横に沈丁花と金木犀を植え込んでおり、成長して花を咲かせて香りが出ると、それはティーグランドで向かい風か追い風かを確認出来るヒントにもなるところから名物ともなっていたのである。

植樹に関しては彼女のお父さんが手配されて選択されたものなので根付くことも早かったが、こんなアイデアを提案してくれた彼女の感性に感嘆した水野だった。

あるゴルフ場をラウンドした時のことだった。フェアウェイやラフのなかに旗が立てられていることに気付いてキャディーさんに聞いたら、オープンセレモニーで迎えた著名なプロゴルファーがティーショットでボールが止まったセカンド地点で、パー3以外の全ホールにあった。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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