2002-05-27

貴重な体験   前 編    NO 87

昔々、テレビのドラマのような体験をしたことがある。

今日は、葬儀に携わる私が体験した様々なハプニングの中で、こんなこともあるのだという実話を紹介させていただく。
 
ある日、事務所に刑事さんがやって来られた。警察手帳と名刺を出され、「責任者は?」ということから私が応対することになった。
 
刑事さんは、書類袋の中から1枚の写真を出され、「よくご覧ください」と言われる。
 それは、葬儀に於ける親族さん達の集合写真であり、その方々の後方には祭壇の存在がはっきりと写っていた。
 
「この写真に見覚えがありませんか?」

 そう言われても、ご多数のお客様を対応していることもあり、見覚えがあると断言出来る段階には至らないもの。

 刑事さんの突然の来社。そして葬儀の親族集合写真を見せられ、一体何が起き、そして何を捜査されているのかということが理解出来ず、「何か、あったのですか?」と、事情の説明を先にお願いしてみた。

 「これは、これは、そうですね。突然に写真を出しても驚かれますよね。では、段階を追ってご説明をしましょう」

 固唾を呑みながら相手の言葉を待っている私。しかし、刑事さんには刑事さんの立場があり、詳しく説明出来ないような雰囲気もあり、俗に言う捜査上の秘密という言葉も飛び出し、今回の来社が思わぬ進展が迎えられることなど全く予想していなかった。

 「まず、この写真の葬儀ですが、御社が担当されたという事実が証明出来ますか?」

 自社が提供するサービス、祭壇の形式を見れば一目瞭然で、「はい、弊社の祭壇ですし、弊社が担当させていただいたようです」
 
「<ようです>では困るのです。担当されたか、されないかということが知りたいのです」
 
 少し口調がきつくなり、テレビドラマの事情聴取の光景を思い出すが、責任のないことは言えないところから、「では、それは、何月何日ですか?」と聞き返した。
 
先方の質問には無理がある。喪主様やご親戚の方々が写っておられる写真でも、その即答を出来ることではない。
 
「では、私から言いましょう。昭和**年**月**日です」
 刑事さんは、警察手帳を開けながら、その葬儀が行われたという日を教えてくれた。

私の中には、写真から式場の特定だけは出来ていた。それは、あるお寺様の本堂で、そこで自身が担当したご葬儀の記憶を順に思い出しながら、教えられた日付を頼りに、お客様のデーターを記した台帳を持ち出した。
 
それを見られた刑事さんは、「やはり間違いないようですね。名前も葬儀の時間も一致しています」と言われる。

 そこから始まった意外な進展、それは、明日から始まります。  
 
( 明日に続きます )
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