2016-11-22
いい話を NO 5037
![夕景 ピピ 夕景 ピピ](images/column_images/9ze/16-1125.jpg)
【 人であふれた駐車場 】
100mほど離れたところに駐車場があり そこにいつも車を停めていました
その駐車場には、いつでも元気で明るい60歳を過ぎたばかりの管理人のおじさんが働いていました。
年齢に似合わずシャキシャキとした行動で手際よく仕事をこなします。毎日のように顔を合わせていましたが、いつもおじさんは明るい笑顔で挨拶をしてくれました。
「おはようございます! 今日も天気で、いい一日ですね!」
以前は大手企業で働いていたそうですが、その会社を定年になって退社し、家が近くにあるというだけの理由で駐車場の管理人の仕事を始めたということでした
ある朝、急に雨が降ってきました。その時、傘を忘れたことに気がつきました。駐車場に着いて車から出ることもできずにどうしたものかと考えていたところに、管理人のおじさんが走りよってきました
「傘、忘れたんじゃない? ちょうど今降り出したばかりだから、これ、持っていきなよ」と言って自分の持っている傘を差しだしてくれたのです
「でも、これっておじさんの傘じゃないの?」
「私のことを気にすることはありませんよ。とにかく持って行って下さい」
自分の傘をお客さんに渡して、自分は濡れて帰ってもいい。普通は中々そんな風に考えることはできないと思います
管理人のおじさんは、いつもこんな調子で自分のことよりもお客さんのことばかり考えてくれるような人でした
その駐車場は、いつも満車の状態でした。他の管理人さんは満車になると小さな管理人室で本を読んだりしていましたが、そのおじさんは駐車場の前に立って申し訳なさそうに「満車です、申し訳ありません」と深々と頭を下げて謝っているのです
中には苦言を呈する人もいます。でも、必ずその車が見えなくなるまで深々と頭を下げ続けていました。
「何も あそこまでしなくてもいいのに・・・」と思っていました
そんなある日 いつものように車を停めようとしたとき、いつもの違う表情でおじさんはやってきました
「実は、今週いっぱいで仕事をやめることにしました。妻が肺を患っていて空気のきれいなところでのんびり暮らすことにしたんですよ。いろいろお世話になりました」
お世話になったのはこっちの方ですよ!と何ともいえぬ寂しさを覚えました
今日が最後という日、ちょっとした感謝の気持ちでおじさんに手土産を持って行くことにしました。
そして 駐車場に着いたとき、信じられないような光景を目にしたのです。小さなプレハブの管理人室には色とりどりの花束がいっぱいに積上げられていて中が全く見えません。
さらに管理人室の横には置ききれなくなったプレゼントがたくさん積み重ねられています。それは2列にもなって・・・
駐車場は、たくさんの人でごった返し 感謝の声が聴こえてきます。
「いつも傘を貸してくれて、ありがとう」
「あのとき、重い荷物を運んでくれて助かりました」
「おじさんに挨拶の大切さを教えていただきました」
次々と写真を撮り、握手をして感謝の言葉を告げています
最後の列にならんでおじさんと話す機会を持ちました
「おじさんには感謝しています。お蔭で毎日気持ちよく 仕事を始めることが出来ました。いなくなってしまうなんて残念です」
「いいえ、私は何もしていませんよ。私にできることは 挨拶することと謝ることくらいですから。でも、いつも自分がやっている仕事を楽しみたい。そう思っているだけなんです」
仕事が面白いかどうかをその仕事の内容に期待すると裏切られてしまうでしょう。面白い仕事も つまらない仕事もないからです。
つまらない仕事なんてない。仕事に関わる人の姿勢が仕事を面白くしたり、つまらなくしてるに過ぎない。
仕事の最後の日、自分がこれまでどのように仕事に関わってきたかをまわりの人が教えてくれます
その時に得られる最高のもの、それは、人と人とのつながりの中で生まれる感動です
今日の写真は広島のピピの社長のブログから拝借。