2003-07-05
司会者とプロデュース NO 476
葬儀やブライダルの司会者の指導をしている中で、この世界を目指す方に是非知っていて欲しいことがある。
私が指導する司会者達は、世間で言われる一流の人が多いが、どこかで壁にぶち当たってやって来られるケースが多い。
セミナーや講演活動でよく言っていたことに、「シナリオを与えられる司会者から、シナリオを創作できる司会者になれ」というのがあった。
葬儀もブライダルも、司会者にはプロデュース力が求められるもの。ここで重要なのが情報の収集という「取材」である。
取材が整理できたら原稿創作に入るが、目で見る文章と耳で聞く言葉の相違を理解しなければならない。
次に問題になるのが「音楽」と「照明」の演出。この部分の総括的なプロデュースが出来なければ一流司会者には絶対になれないと断言するし、音響設備にはとことん拘って欲しいところである。
「昔からクラシックに興味があり造詣深いと言われている」「広いジャンルの音楽を耳にし、何か楽器の演奏ができる」
これらは司会者やプロデューサーの重要な要素であり、若い人なら挑戦するべきテーマである。
プロデューサーとしてシナリオを創作する時、それは映画を創る世界にも似ている。シーンにマッチした音楽の重要性の認識なくして完成はない。
選曲のセンス。その曲に合わせた原稿創作とトーク技術。その曲のどの部分をどのタイムで使用するか。また、イントロの割愛やエンディングの使い切り、そし て次のシーンに使用される曲とのオーバーラップなど、音響、照明オペレーターとのコミュニケーションなくしていい仕事は不可能となる。
私は、大規模なホテルや文化ホールでの社葬では、専属の音響照明のプロをキャスティングして随行を願うが、北海道や九州という遠方の場合でそれが無理とな れば、ミキサー担当責任者に「音響関係は、すべて司会台のすぐ横にセッティングを」と願い、自分で喋りながらボリュームまで調整する。
「そんなこと出来るのですか?」と、いつも訝られるが、システムがセッティングされ、進行のエンディングを迎えた時、その世界のプロ達が驚きの表情を見せることになる。
時には弦楽四重奏やオーケストラ、コーラスをキャスティングすることもあるが、あくまでもプロデューサーである私が主導権を握り、こちらの思いを徹底的に伝え、音楽の持つパワーを最大限に引き出す苦労をしている。
演奏者達は、与えられた曲を演奏さえすればと考えているようで、<生意気な>という敵対心を表すことも少なくないが、こんな際、「私が司会をするのです。 あなた達がおっしゃる演奏と、私が編曲を願ったものと何が違うか実際にやってみましょう」という体験をさせることにしている。
彼らは確かに音楽のプロだが、葬儀のプロは私である。秒単位で緻密な注文をつけ、時にはソリストの担当楽器を変更させることもあるが、リハーサルで実演してみると、いつも私の意見を理解してくれる。
卓越した司会技術にプロデュースパワーがひとつになれば理想。そんな司会者を目指して欲しいと願っているが、司会者、プロデューサーは。時にコンダクターであると意識して欲しいものである。