2008-10-26

世相の一面に  NO 2301


  南極観測船「しらせ」がスクラップになると報じられていた。その船名は誰もが知る「白瀬中尉」の偉業から命名されたもの。明治の終わり頃に出発、大正に変 る年の一月に南極大陸に上陸を果たした偉大な人物だが、「成功して戻ったら大金を出す」と約束した国会が一銭も出さすに大変なご苦労をされた逸話も残され ている。

 小さな「開南丸」という船で出発、1年2ヶ月を費やして到達したそうだが、それから45年後、2700トンクラスという「宗谷」で再上陸を果たし、昭和基地が建設されたことは戦後の中の明るい出来事であった。

 そこで越冬という偉業を成し遂げたのが副隊長だった「西堀栄三郎」さんで、私と同じ名なのでしっかりと記憶している。

  この「宗谷」という船は数奇な運命を歩み、造船時はソ連から受注した砕氷船であり、国際情勢悪化から引渡しに至らず、貨物船として竣工、その後は海軍の特 務艦で終戦を迎え、引き揚げ船として活躍、やがて海上保安庁の灯台補給船を経て南極観測船として転用改造され、昭和31年に出発、5年間で6往復の就航、 そして昭和37年から海上保安庁の巡視船として北海道海域を中心に昭和47年まで活躍しており、東京お台場の記念館に保存されるようになった。

「宗 谷」の転用に関しては南極観測に関する国際会議があり、敗戦国という現実を前に出席をした我が国に対して各国から蔑視されたという史実もあるが、「行 く!」と決まってから出発までには国民の大きな期待があり、未知の世界への挑戦に夢を抱いて協力を申し出た企業が1000社にも及び、現在のホンダやソ ニーの前身や竹中工務店などの逸話も有名である。

 そんな時代に比べ、我が国は何と情けない社会となってしまっているのだろうか。食品偽装なんて「何でもあり」の状態。その行為に及ぶ背景には拝金主義が。人の命や子供達の将来なんて完全に無視されている現実があまりにも恐ろしいではないか。

 地球環境問題にあってCO2排出に関し、協定された許容範囲を互いの国家が売買出来るとは人の世の行動ではなく、ここにも「何でもお金」という愚かな現実がある。

 そんな世界経済が揺らぎ始めている。「株」のような実態ではない紙切れに振り回される国家、企業だけではなく、一般的な個人までが悲鳴を上げている。

 学校交流から、初めて沖縄に行ったのは高校2年生の夏休みだったが、当時はアメリカ統治でパスポートを要し、ドルに換金したら360円というレートが続いていた。それが今、四分の一まで円高が進んでいる。

それは、我が国が見事に戦後復興を成し遂げた証しのようだが、資源が乏しく食料自給率が信じられないほど低くなっているし、年金や医療制度の崩壊も悲しい現実。「真」の政治家が見当たらない将来には暗雲が立ち込めている。

 引ったくり、轢き逃げ、オレオレ詐欺など、弱者をターゲットにする犯罪も増加の一途。そんな中で低次元な「お笑い番組」のオンパレード、著名な社会評論家だった「大宅壮一」の名言「一億総白痴化」がいよいよ現実味を帯びてきた。

 私に届くメールが多い。その中に全国の葬儀司会者からの質問や相談が目立っており、その多くが事件や事故の被害者のお通夜や葬儀での問題だ。こんなところにも世相の現実が表面化してきている。そんな悲しい葬儀が少なくなるように願って手を合わそう。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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