2008-10-18

取材から  NO 2294


 前々号で「出会いは偶然、別れは必然」と書いたが、これまでの人生の中で出会った多くの方々との「えにし」を考えてみると、その偶然の中に神仏が「必然」としてめぐり合わせてくださった方々の存在があるように思えてならない。

 素晴らしい人との出会いは人生にあって何よりの宝物であり「幸せの源」とも言えるだろうが、そんな出会いの中で知らなかったことを教えてくださった方がいっぱいあり、心からそんな出会いに手を合わせている。

 もうすぐ30歳を迎えるという頃だった。ある方から次のような質問をされたことがあった。

「知 人の法要に招かれ京都に出掛けたのですが、仏間がある部屋の床の間に掛けられた軸に驚いたのです。柿の木みたいなイメージで描かれた枯れ枝の一本に、おか しな巾着袋みたいな物が引っ掛かっているのです。<なぜ、こんなお軸を?何か意味があるのだろうか?>と不思議そうに見つめていたら、当日の施主が横に来 られ、さりげなく『涅槃に因みましてね』とだけ言われて別室に行かれ、すぐに法要が始まったのです。あなたは、このお軸の意味が分かりますか?」

 その方は、もう60歳以上の方。私も当時から宗教関係の本をかなり読んではいたが、全く心当たりもなく、分かりません」と正直に答えた。

「私も分からず、法要が終わるまで気になり、御斎になってからご当主に質問をして教えていただいたのです」 

「こ の軸は、当家に100年以上前からあるもので、ご先祖様の法要の際に掛けるのが伝統になっています。お軸の絵の意味は、あの巾着袋の中には薬がいっぱい納 められてあり、お釈迦様が急病で倒れられ、涅槃にお入りになられるのをご心配になったお釈迦様の母上様が、天上から救うことを目的に投げられたのですが、 残念にも枝に引っ掛かってしまったという出来事を現し、その背景には、お釈迦様のお母上様やお釈迦様でもどうにもならないことがあるという逸話を表現した ものなのです」

 それが「涅槃に因みまして」の意味であったが、仏教の逸話には興味深いことがいっぱいあり、時折に紹介をしていこうとも考えているところである。

  さて、一昨日、本社スタッフからの電話、「取材の申し込みですが、如何いたしましょうか?」とのこと。そこでどんなことを取材されるのかを確認して欲しい と伝えたら、相手さんは大手新聞社系経済部の記者さんで、様々な業界の中で「匠」と称される仕事をしている人をテーマに採り上げているそうで、ネットの中 で式典総合プロデューサーと司会を生業とする私のことを知られたことからの取材だった。

 女性司会者とスケジュールの話しをしていたら、今日の夕方に来社希望とのこと。そこで態勢が不十分だったが、彼女を交えて約2時間の取材を受けた。

  人生ドラマをプロデュースする。それらを参列される方々に公表するシナリオ構成をしながら、スタッフそれぞれの役割を集大成させて進め、そこで重要なのが キャスティングということを説明、これまでに担当した映像から始め、高度な音響システムの重要性をご体感いただくところから、私と彼女の掛け合い形式のナ レーションなどもご体感いただいた。

「びっくりです。不思議な世界を感じます。資料調査で日本を代表されるとか、日本一の葬儀司会者という情報も入手していましたが、間違いなく特別な世界で衝撃を受けました」

 そんなご感想を語ってお帰りになったが、果たしてどんな記事になるかは分からない。弊社に予想もされていなかった「オリジナル・サービス」がいくつも存在していることもご理解に至り、秋の夕景の中で後ろ姿をお見送り申し上げた。
久世栄三郎の独り言(携帯版)
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