2007-09-02

お使いくださいよ!  NO 1961


 私に「ヘボ碁」の経験があることを知られた女性からのメール、「子供に教えたいのですが?」とあった。

 球技には自信のあった私だが、頭を使う囲碁や将棋は全くダメで下手。ただ月刊誌など囲碁に関する書物を10年ぐらい読み、雑学だけはいっぱい詰まっている。

 囲碁を始めたきっかけは、20代の頃。尊敬する税理士さんから「覚えなさい」と指導されたことからだが、その事務所のスタッフの皆さんと対局するのが楽しみになり、負けたくない心情から本を購読するという不純な学びの時代もあった。

 過去にも書いたが、「試金石」「布石」などの言葉に裏付けられた奥深い世界があり、それらは経営者に不可欠な先見性を学ぶ考え方にも通じ、新聞の囲碁欄は今でも欠かさず目を通している。

 先番の黒の有利から数目の「コミ」というルールが出来た歴史もあるが、同レベルの対戦相手との対局は心臓に悪く、胃潰瘍や十二指腸の原因になることも否めないようだ。

 対戦で悲劇となった物語と言えば、鍋島藩の「猫化け」事件が有名だが、勝負とは刃物沙汰になるようにエスカレートすることもあり、時には友情を崩壊させてしまうことも少なくないようでもある。

 書物で呼んだ逸話だが、昔、名張棋院が設立された際、ゲストに招かれた著名な棋士が一人の小学生を伴って出席をされ、地元の高段者の人とその子を対戦させることがあった。

 多勢の人達が見守る中、その子との対戦が始まろうとした時、棋士は次のように解説をされた。

「この子は私の弟子です。技術は成長していますが、ただそれだけのもの。まだ相手さんに合わせる技術には達していないので失礼な碁を打つでしょうが、お許しをくださいますように」

 そして対戦が始まり、あっという間に子供の中押し勝ちという結果。そこでアマとプロのレベルの違いが歴然としたという出来事だった。

 また、阿倍野の近鉄百貨店の恒例イベントとなっている「囲碁祭り」にも何度か足を運んだことがある。中でも一流棋士による10面打ちを観戦した経験も衝撃的だった。

 囲碁や麻雀をやってみて感じたこと、それは<こんなゲームをよくも考えたものだ!>ということ。そんなところから歴史を遡ることも楽しいことである。

 今、会社や自宅に「大法輪」という月刊誌のバックナンバーが山ほどあり、毎月増えてきているが、その数ほど囲碁の月刊誌を積み上げていた時期もあり、20ほど前に処分されてしまった本に何やら「愛しさ」を感じる思いがした。

 碁盤の高級品は「榧(かや)」の木が最高だが、30年ほど前に目にした「3000万円」の碁盤にびっくり、ガラスケースの前でしばらく立ち止まって眺めていた思い出もある。

 私が買い求めたのは、6寸盤の「新かや」で8万円だった。所謂外材のスプール材みたいなもので、打った感触は本物とは異質のレベル。しかし、宮崎県に行った時に買い求めた碁石はまあまあの物。黒石は那智黒石、白石は日向ハマグリのかなり厚めのものである。

 その時に驚いたのが特別なハマグリで作られた見事な白石、30年前で、1個が8万円というのだから衝撃的、180数個の白石が必要なのだから驚く金額になるだろう。

 それを見た後で「すみませんが」と小さな声で店員さんを手招き、白と黒の両方で12万円、それに3万円の器を申し訳なさそうに購入し、伴っていた妻から「もったいない」と叱られたのが懐かしい。

 今、小学校へ通う子供さんだが、覚えるまで碁盤と碁石を貸して上げようかなとも思っている。兄弟でテレビゲームに没頭されるよりはよいことだと確信しているので、ご一報を。
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