2002-08-23
殯 儀 NO 174
台湾、中国では、葬儀のことを「殯儀」と表現しているが、この言葉を初めて知ったのは、私が35歳の頃。台湾の葬祭場、火葬場、葬儀社、寺院の見学に行った時である。
旅行会社に勤める友人に現地ガイドの紹介を依頼し、台北空港から4日間の研修の旅。あまり日本語が達者でなかったガイドさんから「不思議な日本人」と呼ば れたが、私の研修の趣旨を理解されると、次々にグローバルな世界を案内してくれ、ある有名な寺院では高僧との面談までセッティングしてくれ恐縮した。
「殯儀」の「「殯」という文字は、「かりもがり」とも読まれ、学研の漢和大字典には次のように記されていた。
<埋葬する前に、しばらくの間、死体を棺に納めたまま安置する。また、その作法>
「殯殿」「「殯宮」という言葉もあり、日本の皇室に於ける葬送の歴史の中にも「殯」という文字の付く儀式が登場している。
さて、WEDGEの8月号に、「知道中国」野心的でドライな殯儀教育と題された「樋泉克夫さん」の文章があり、興味を抱いて読ませていただいた。ここで、勝手ながらその一部を原文のまま下記申し上げる。
「北京の国家民政部と湖南省政府の手で長沙民政職業技術学院が創設される」
「この学院は民政に従事する人材を養成し、中国の社会工作を発展させ、人民大衆の幸福に寄与するとの教育方針にもとづき、民政行政管理、社会工作、電子技術、経済貿易、コンピュータ、芸術設計などの系(学科)を持つ」
上記の文章表記の後で、次の一文があった。
「殯儀系のカンバンを掲げた学科が置かれていることを知らされると、ハタと頭を抱えてしまう。殯儀系というからには、ヒトの死にかかわる一切を取り仕切ることを学ぶということだろう」
「殯儀系は『現代的葬儀技術・管理』と『墓園設計・管理』の2つのコースに別れ、遺体の処理から埋葬まで葬儀を万事つつがなく執りおこなえる技術を身につけ、関連法規を学び、葬祭業に携わる人材を育てることを目的としている」
「全国各地に数十を数える葬祭場、工場、会社と提携し、10を超える省や市に実習場所を確保しているだけではなく、台湾の葬儀社である龍誉(殯葬)公司と相互交流を実施しており、台湾側が奨学金を提供し、優秀な卒業生は台湾に送られ関連業務に就く」
「また、全国モデルとして、コンピュータネットワーク利用による全国初の通信方式の葬儀教育も今年中には立ち上げるべく、鋭意準備中である」
この後には、わが国に照らし合わされての文章表記もされていたが、今、日本もこの分野の意識改革に目覚め、我々日本トータライフ協会の活動のような、葬祭 文化向上への具現化が進んでいることだけはご理解いただきたいと思ったし、現在の日本のように、自社利益第一主義の葬祭ビジネスでは、文化の完成に至るこ とがないと確信した次第である。